世界銀行、MENA地域の最新の経済状況を報告、緩やかな成長を予測
(湾岸協力会議(GCC)、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、イラン、エジプト)
調査部中東アフリカ課
2025年04月28日
世界銀行は4月23日、中東・北アフリカ(MENA)地域の最新の経済状況を発表した。同地域の2024年の実質GDP成長率は1.9%だったが、2025年は2.6%、2026年は3.7%と緩やかな成長を予測した。一方で、中東地域での紛争はMENA地域全体の成長を減速させており、その影響は長期間にわたると指摘した(添付資料表参照)。
2024年のMENA地域全体の成長率は2023年と同水準だったものの、湾岸協力会議(GCC)諸国の成長率は2023年の0.4%から2024年は1.9%に上昇した。GCCの成長には、特にサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)の非石油部門の成長が寄与したとしている。一方で、イランの石油生産の停滞により、石油輸出途上国(注1)の成長率は2023年の3.6%から、2024年は1.9%に減速した。また、石油輸入途上国・地域(注2)でも成長率は2023年の3.2%から、2024年は1.9%へ減速した。主な要因はエジプトの製造業の低迷やスエズ運河の通行量減少(2024年10月9日記事参照)による成長鈍化としている。
2025年以降については、石油輸出国は石油生産の緩やかな増加、石油輸入国は個人消費とインフレの緩和がそれぞれ成長を支えるとしている。2025年と2026年の成長率見通しについては、GCCが3.2%と4.5%、石油輸出途上国が0.8%と2.4%、石油輸入途上国が3.4%と3.7%となっている。一方で、世界的な政策の不確実性や需要の低迷、石油市場の変動性・脆弱(ぜいじゃく)性がMENA地域の経済活動の回復に対するリスクとしている。
また、世界銀行は、中東地域での紛争が長年にわたりMENA地域の経済成長の停滞に深く影響していると指摘している。MENA地域では民間部門の生産性が低く、低下傾向にあるため、紛争による影響に対応することが難しいとしている。加えて、同地域は高い経済的損失を伴う異常気象や自然災害の頻発に対して最も脆弱な地域の1つであることも影響し、紛争がビジネスの成長を著しく阻害するとしている。世界銀行は影響力の大きい政府の役割の見直しと、企業の効果的な人材の活用が必要と強調している。
なお、IMFは地域紛争の影響について、2024年11月にMENA地域の石油輸出国へは限定的であることを(2024年11月24日記事参照)、同年12月にはGCC諸国へは限定的なものの、中期的なリスクがあることをそれぞれ報告している(2024年12月26日記事参照)。
(注1)今回の世界銀行の報告では、リビア、イラン、アルジェリア、イラクを「石油輸出途上国(Developing Oil Exporters)」に分類している。
(注2)今回の世界銀行の報告では、エジプト、チュニジア、ヨルダン、モロッコ、ジブチ、ヨルダン川西岸・ガザ地区を「石油輸入途上国(Developing Oil Importers)」に分類している。
(加藤皓人)
(湾岸協力会議(GCC)、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、イラン、エジプト)
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