外国企業の直接投資、1~3月は前年より増加も、今後は減速に懸念
(ベトナム)
ハノイ発
2025年04月24日
ベトナム外国投資庁によると、2025年1~3月の対内直接投資(認可ベース、3月31日時点、出資・株式取得を除く)は、新規・拡張の合計で1,251件(前年同期比40.2%増)、認可額は94億8,918万ドル(66.2%増)だった(注)。
業種別にみると、件数、認可額ともに1位の製造業は、569件(前年同期比43.7%増)、63億457万ドル(64.7%増)だった(添付資料表1参照)。認可額の2位は不動産で22億4,158万ドル(前年同期比46.4%増)、3位はコンサルなどで2億5,342万ドル(6.4倍)となった。また、件数の2位は小売り・卸売りなどで339件(38.4%増)、3位はコンサルなどで127件(62.8%増)だった。
1~3月の最大の投資案件は、北部バクニン省での韓国のサムスン電子による拡張投資案件(投資認可額12億ドル)だった。1月時点の報道では、サムスンは計18億ドルの拡張投資を行い、2025年は前年比10%の増収となる347億ドルの売上高を見込んでいた(オブザーバー紙1月12日)。しかし、今後の投資の実行や生産計画は、米国の関税措置の方向性にも大きく左右されそうだ。現在、サムスンが生産するスマートフォンのうち、ベトナムが50%以上、インドが約30%を占める。残りはブラジル、インドネシア、韓国で生産する(ベトナムネット4月9日)。
国・地域別の認可額は、シンガポールが23億2,808万ドル(前年同期比0.5%減)で首位だった(添付資料表2参照)。2位は韓国で18億4,335万ドル(4.6倍)、3位は中国で14億2,236万ドル(2.7倍)となった。日本は4位で10億6,306万ドル(2.2倍)だった。また、件数は中国が317件(48.1%増)で首位だった。2位のシンガポールが171件(34.6%増)、3位の香港が148件(62.6%増)と続いた。日本は120件(64.4%増)で5位だった。
日本の大型案件では、自動制御機器製造大手SMCによる南部ドンナイ省での拡張投資があった。同社は半導体製造装置に使われるバルブなどを製造しており、2014年の設立以来、ベトナムへの総投資額は10億ドルに達する見込み。
出資・株式取得は、件数が810件(前年同期比34.1%増)、認可額が14億8,945万ドル(3.2倍)となった。なお、直接投資の実行額(推計)は49億6,200万ドル(7.2%増)だった。
1~3月は、シンガポールや韓国、中国、日本などのアジア各国・地域からの拡張投資の認可が大きく増加した。しかし、米中対立に伴う生産移管先に選ばれてきたベトナムへの外国企業の投資は、米国の関税政策による不確実性の高まりで、今後、減速も懸念される。
ベトナム外資系企業協会(VAFIE)のグエン・マイ会長は「政治の安定性、前向きな経済成長の基盤などにより、ベトナムは依然として魅力的な投資先としての地位を維持している」との見解を示している(VNエコノミー4月22日)。
(注)外国投資庁は、以前は当月20日時点の数字を公開していたが、2024年8月から当月末日時点の数字を公開する運用に変更したため、集計期間は前年同期と異なる。
(萩原遼太朗)
(ベトナム)
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