CSISインドネシア、米国の相互関税に関するフォーラム開催
(ASEAN、インドネシア、米国)
ジャカルタ発
2025年04月18日
戦略国際問題研究所(CSIS)インドネシアは4月10日、「トランプ2.0に対する地域の対応」と題したフォーラムを開催した。フォーラムには、ディア・ロロ・エスティ商業副大臣やアリフ・ハバス・オエグロスノ外務副大臣、マリ・パンゲストゥ国家経済評議会副議長、米国商工会議所(AmCham)インドネシアでマネージング・ダイレクターを務めるドナ・プリアディ氏らが登壇した。
オンラインで基調講演をしたアリフ外務副大臣は、米国の相互関税措置により「ASEAN地域の潜在性に目が向けられる好機となる」と述べた。また、同副大臣は、「インドネシアはASEAN物品貿易協定(ATIGA)の見直し交渉や米国との貿易投資枠組み協定(TIFA)の活用を進めると同時に、ASEAN地域間の貿易障壁撤廃を進める」との意向を表明した。
ロロ商業副大臣は米中貿易戦争の中、インドネシアは戦略的に中立の立ち位置を堅持する必要があると強調した。また、繊維・衣料品、履物、パーム油、ゴムタイヤ、電子部品、自動車部品などを含む労働集約部門への影響に懸念を示したうえで、「これらの産業は輸出志向型であるだけでなく、国内雇用の維持や農村開発の観点からも重要だ」と述べた。さらに、4月16日から開始する米国との2国間交渉(注)だけでなく、ASEAN内の議論もインドネシアが主導する考えを示した。
マリ国家経済評議会副議長はASEANとして取り組むこととして、(1)相互関税の税率差に起因する域内のサプライチェーン変更への対応、(2)中国を含めた周辺国からの域内への輸入増加への対処、を挙げた。また、相互関税措置はWTOのルールに違反している可能性が高いと指摘したうえで、「このような情勢だからこそ、より一層、WTOのルールに基づく貿易救済措置などを活用すべき」と強調した。
シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院のダニー・クオ学部長は、米国の関税措置は、新興国が大きな恩恵を受けてきた、多国間ルールに基づく秩序の崩壊だとした。また、米国が主導してきた多国間ルールに基づく秩序に、米国自身がもはや価値を見いだしていないとしたうえで、「発展途上国を脆弱(ぜいじゃく)で無防備な状況に追い込んでいる」と強調した。
在インドネシア米系企業の代表として参加したドナ氏は、「相互関税措置に対応するためだけでなく、インドネシアのビジネス環境を改善する長期的な観点からも、国内の規制改革が必要」と強調した。さらには、相互関税は主にインドネシアから米国に衣料品や靴製品を輸出する300社以上の在インドネシア米系企業に影響を及ぼすほか、「米国内の顧客にも打撃を与えるというドミノ効果をもたらす」と述べた。
フォーラムでの議論(ジェトロ撮影)
(注)インドネシア経済担当調整府は4月14日、アイルランガ・ハルタルト経済担当調整相、ブディ・サントソ商業相、マヘンドラ・シルガー金融サービス庁(OJK)長官、マリ国家経済評議会副議長らを、米国の相互関税に関する米国商務省や財務省、通商代表部(USTR)との交渉のために4月16日から23日にかけてワシントンに派遣すると発表している(4月14日、経済担当調整府プレスリリース)
(大滝泰史)
(ASEAN、インドネシア、米国)
ビジネス短信 a663e2ac4449e525