カナダ総選挙、カーニー首相が勝利宣言、与党・自由党が政権維持

(カナダ)

トロント発

2025年04月30日

カナダの第45回連邦下院議会選挙が4月28日に実施外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますされ、マーク・カーニー首相率いる与党・自由党が定数343のうち169議席(改選前154議席)を獲得し、同党4期目の政権継続が確実となった。連邦選挙管理局の発表によると、投票率は68.7%で、前回2021年(62.6%)より高かった。

カーニー氏は29日早朝の勝利演説で「ドナルド・トランプ米大統領はカナダを破壊し、カナダを支配しようとしているが、そのようなことが起こることは決してない」と述べ、カナダを故郷と呼ぶ全ての人々を代表して最善を尽くすと誓った。

自由党が打ち出した公約は「カナダ・ストロング」と題し、4つの柱で構成している。

  1. 団結:国家の団結の重要性を強調し、カナダ経済を1つにまとめることで国を強化することを提案
  2. 安全:カナダの主権を確保することに焦点を当て、軍事力の強化、食料安全保障の向上、北極圏の安全保護など
  3. 保護:公共医療、家族支援、環境保護など、カナダの価値を守る必要性を強調
  4. 構築:強固な経済、手頃な価格の住宅、クリーンエネルギーなどを通じた気候変動対策を提唱

また、最大2万カナダ・ドル(約206万円、Cドル、1Cドル=約103円)の資金提供を行う体外受精(IVF)プログラムの設立や、NATOの国防費目標の2029~2030年度までにGDPの2%を防衛費に充てることなど、新たな公約も発表している。さらには、人工知能(AI)の商業化に向けた年間1,200万Cドルの予算や、中小企業向けの年間1億Cドル相当のAI導入税額控除など、カナダのテクノロジー分野を支援する計画も挙げている。そのほか、住宅や公共インフラ、社会福祉への負担を軽減するため、2027年末までに臨時労働者と留学生の総数をカナダの人口の5%未満に制限し、2027年以降も永住権受け入れをカナダ人口の年間1%未満に安定させ、経済成長と繁栄を牽引する世界トップクラスの人材の誘致に重点を置く計画だ。

カーニー氏は投票翌日の29日にトランプ米大統領と会談を行い、同氏から選挙勝利の祝福を受けた。両首脳は両国それぞれ独立した主権国家で、相互の発展のために協力していくことの重要性について合意し、近い将来に直接会談を行う予定という。

野党第1党の保守党は改選前の120議席から144議席に増やしたものの、党首ピエール・ポワリエーブル氏は自身の選挙区で落選した。自身の議席は失ったものの、党首に留任する意向を示している。一方、ブロック・ケベコワ(党首:イブ=フランソワ・ブランシェ氏)は改選前の33議席から23議席に減らした。新民主党(NDP)は24議席から7議席となり、政党要件の12議席を確保できず、下院の正式な政党としての地位を失った。同党のジャグミート・シン党首は自身の選挙区でも敗れ、暫定党首が任命され次第、辞任する意向を発表した。緑の党(党首:エリザベス・メイ氏)は1議席減の1議席だった。

(井口まゆ子)

(カナダ)

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