ASEAN、オセアニアとの改定FTAを発効、供給途絶を想定
(ASEAN、オーストラリア、ニュージーランド)
バンコク発
2025年04月23日
ASEAN事務局は4月21日、ASEANオーストラリア・ニュージーランド自由貿易協定(AANZFTA)の第2議定書が同日発効したと発表した(注1)。パンデミックなど危機時を含む貿易円滑化のほか、政府調達や持続可能性などに関わる新たな規律導入を実現した。
発効に伴い、カオ・キム・ホンASEAN事務総長は「グローバルな不確実性において、AANZFTAは(ASEAN)地域の強靭(きょうじん)性を維持しつつ、持続可能な経済成長を促すためのわれわれの共同の取り組み」と強調した。シンガポール貿易産業省の発表によると、今回の改正のポイントは次のとおり(注2)。
- ASEANが締結するFTAで初めて、パンデミックなど人道的危機に不可欠な必需品について、制限措置を導入しないこと、通関を迅速化すること、不足する必需品を互いに要求できることを確保。
- ASEANのFTAで初となる原産地規則での完全累積制度の導入。また、シンガポールにとっても初めて、経由地における商品の滅菌処理を認めるなど貿易を円滑化するルールを規定。
- 地域的な包括的経済連携(RCEP)協定の発展形として、専門・教育サービスに関する付属書を採用。教育サービスに関わる付属書はASEAN初。電気通信サービス付属書を改定し、電気通信サービスプロバイダーによる再販の権利を保護するとともに、新規参入にかかる時間を短縮。
- 新しい政府調達章を通じて、より明確で透明なルール、規制および手続きの確保。環境に配慮した調達、調達における電子手段の使用などを促進。
- 独立章としての「貿易および持続可能な開発(TSD)」章はASEANのFTAで初。グリーン経済への移行を支援するための機会促進に向けた協力などを規定。
- 政府間の協力を促進し、中小企業のビジネス環境を改善。グリーン経済やFTAの利用能力向上などの分野で中小企業のための協力を促進。
ASEAN事務局は、オーストラリア・ニュージーランドとの間で、AANZFTAとRCEPの実施を支援するために、4,870万オーストラリア・ドル(約43億3,430万円、豪ドル、1豪ドル=約89円)相当の支援基金を設置し、課題に対応しているという。
また、ASEANのオーストラリアおよびニュージーランドとの貿易総額は1,384億ドル(2023年)、両国からASEANへの外国直接投資は3億454万ドルに上る。
(注1)批准国は4月21日時点で、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、マレーシア、ラオス、ブルネイ。
(注2)上記ポイント以外の主な改正内容は2023年10月2日記事参照。
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(ASEAN、オーストラリア、ニュージーランド)
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