チリ、トリニダード・トバゴとのAAPに署名、CARICOM加盟国で初
(チリ、トリニダード・トバゴ)
調査部米州課
2025年04月28日
チリ外務省の国際経済関係次官官房(SUBREI)は4月25日、クラウディア・サンウエサ総局長と、トリニダード・トバゴのポーラ・ゴピ=スクーン貿易・産業相が両国の部分的到達協定(AAP、注)への署名を行ったと明らかにした。チリにとっては、カリブ共同体(CARICOM)の加盟国と同種の協定を締結する初めての事例。署名式は、非対面のバーチャル形式で開催され、今後の両国の国会での承認をもって発効する。
本協定は、2021年から2024年にかけての5回の交渉と、リーガルチェックによって署名に至ったもので、「財の貿易」「原産地規則」「法制度上の問題」「貿易の簡素化」「経済安全保障」「競争政策」「検疫」「貿易に関する技術的な障壁」などの章から成る。
式の中でサンウエサ総局長は、世界情勢を踏まえた輸出先の多角化を図るチリにとってのカリブ海地域の戦略的な重要性に言及し、ゴピ=スクーン貿易・産業相は、本協定を契機とした両国の関係性の深化への期待を述べた。チリ中央銀行によれば、2024年のチリからトリニダード・トバゴへの輸出額は約2,400万ドル、同国からの輸入額は5億1,300万ドルで、チリ側の大幅な輸入超過となっている。
チリからの輸出品では、サーモン、マス、ブドウ、リンゴ、洋ナシ、アンズ、ナッツ類は、現行の40%の関税が協定の発効によって即時撤廃される。さらには、ベリー類(冷凍されたもの)、ドライプラム、木製品の一部は、現行の関税15%が協定の発効から4年で撤廃される。モモ、ネクタリン(ズバイモモ)、プラム、キウイ、ベリー類(生鮮のもの)は、現行の関税40%が協定の発効から9年で撤廃される。
他方で、トリニダード・トバゴについては、チリへの輸出品のうち、267品目が協定による関税の削減、または撤廃の対象となり、現在までの主要な輸出品である天然ガス(輸出総額の約75%)とアンモニア(約25%)は即時撤廃の対象となっている。
(注)ラテンアメリカ統合連合(ALADI)の枠組みの中で締結される協定。GATT24条に基づき実質的に全ての貿易を自由化する義務を負う自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)とは異なり、GATTの授権条項に基づき、途上国間であれば、一部の産業分野のみを対象とする部分的な協定が締結できる。通常は2年、または3年の期限付きで締結される。
(佐藤竣平)
(チリ、トリニダード・トバゴ)
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