石油製品販売大手Vibraが国内初のSAF輸入販売開始、リオデジャネイロの国際空港で使用
(ブラジル)
調査部米州課
2025年04月22日
ブラジルの石油製品販売大手Vibra Energia SAは3月25日、国内で初となる持続可能な航空燃料(SAF)の商用規模での輸入と国内販売を行ったと発表した。リオデジャネイロ州内に所在するアントニオ・カルロス・ジョビン国際空港を離発着する航空機に利用される(同日付Vibra Energia SA公式サイト)。
Vibra Energia SAのマルセロ・ブラガンサ事業担当副社長によると、同国際空港がISCC認証を取得したことが、同空港を利用する航空機へのSAF使用を後押しした(注1)。今後、同社の燃料を使用する航空機は、SAF10%、従来の航空機燃料90%の混合率で使用する。国内の航空燃料市場のシェア6割ほどを有するVibra Energia SAが提供するSAFは廃食油から製造されている(注2)。従来の航空燃料と比較して、温室効果ガス(GHG)排出量を約80%削減できる。
航空燃料のSAFへの移行は、航空分野のGHG排出削減に関する国際目標の制定に起因する。2022年10月に開催された国際民間航空機関(ICAO)総会で、短中期的な削減目標として、2024年以降はGHG排出量を2019年の85%以下に抑えることや、長期的な目標としては、2050年のカーボンニュートラル達成の目標で合意した。その達成手段として、従来の航空燃料と比較してGHGを大幅に削減できるSAFの需要が高まっている。
ブラジルでは2024年10月、持続可能な低炭素モビリティーを促進する法律第14,993号(通称:未来の燃料法)が承認され、その中の「SAFプログラム(ProBioQAV)」で、2027年1月1日以降、国内線を運航する航空会社に対し、SAF使用によってGHG排出量を年1%削減することを義務付けた(2024年10月16日記事参照)。
4月16日付現地紙「バロール・エコノミコ」によると、SAF需要は世界的に増しているものの、供給が追いついていない。国際航空運送協会(IATA)によると、2024年時点の世界のSAF生産は19億リットルで、前年比3倍になったものの、航空市場での需要のわずか0.5%にすぎない。国内でのSAF製造については、国内石油元売り最大手のペトロブラスが6月初旬に自社生産するSAFの市場投入を予定している。Vibra Energia SAも2004年以降、廃食油を用いるSAFの製造に取り組んでおり、2025年上半期に自社生産SAFの市場への投入を予定している(4月16日付現地紙「バロール・エコノミコ」)。
(注1)ICSSは、International Sustainability & Carbon Certification(国際持続可能性カーボン認証)を指し、バイオマス、バイオエネルギーの認証制度。廃棄物原料の生成から加工、輸送、最終製品輸送までのサプライチェーン全体への認証が必要とされる。
(注2)SAFの製造方法には、廃食油などを高圧下で水素化分解して製造する方法(Hydroprocessed Esters and Fatty Acids)、バイオエタノールを触媒によって改質して製造する方法(Alcohol To Jet)、二酸化炭素(CO2)と水素から合成粗油を製造し、ジェット燃料に転換する方法などがある。
(辻本希世)
(ブラジル)
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