マレーシア日本人商工会議所調査、中長期では4割に米関税政策のマイナスの影響
(マレーシア、米国)
クアラルンプール発
2025年04月30日
マレーシア日本人商工会議所(JACTIM)は4月28日、米国の関税政策に関する緊急アンケート調査(実施期間4月23~27日、有効回答数76社、回答率13.7%)を行い、回答企業向けに結果を公表した。調査によると、マレーシアから米国に輸出を行う企業は23.7%にとどまり、それら企業の6割以上で対米輸出比率は2割を切っている。一方、対米輸出比率が20%を上回る企業の多くが電気・電子産業だった。
米国が実施または検討している関税措置に関し、32.9%の企業が「影響はない」と回答した。しかし、それを上回る4割超が「分からない」とし、現在のところは影響を見極める段階にある企業が最多だった。これに、「全体としてマイナス」が18.4%、「プラスとマイナスの影響が同程度」が5.3%で続く。具体的な関税措置としては、マレーシアに課された10%の共通関税のみならず、中国に対する高関税についても、同率で約4割の企業が影響因子と認識していることも分かった。
具体的対応は現時点では限定的、中長期ではマレーシアでの事業再編も
足元の具体的影響としては、「景気後退など間接的な影響」を挙げた企業が54.5%と過半、次いで「受注や販売の減少・停止」(31.8%)、「販売価格・取引価格への影響(値下げ圧力)」(18.2%)が続いた。一方、「受注や販売の増加」(18.2%)や「中国からの切り替え(製品置換、生産移管など)による自社ビジネス拡大」(13.6%)など、ポジティブな変化を挙げる企業も一定数見られた。
目下の対応としては、「調達網の多角化」と「販売チャネルの多角化」が21.8%と同率、これに「販売先・消費者への価格転嫁」(16.4%)と「マレーシアにおける事業計画変更」(12.7%)が続いた。ただ、これらを大きく上回る43.6%が「その他」を選択し、中身としては「特に対応しない」「様子見状態」といった記載が多く、現時点では具体的対策にまで踏み込んでいない様子も分かった。
これを踏まえ、関税措置が継続した場合の将来的影響についても別途尋ねたところ、足元と比べても「分からない」の比率は46.7%とさらに増加し、先行き不透明感の大きさがうかがえた。ただ、「全体としてマイナス」(37.3%)との回答が「影響はない」(8.0%)を大きく上回った点が現況の評価とは異なる。これに対する中長期的対応としては、「マレーシアにおける事業計画変更」と「販売チャネルの多角化」がそれぞれ30.0%と最多で、足元の主な対応項目とは明確な違いが見られた。米国の関税政策がマレーシア国内での事業計画にも大きな影響を及ぼし得ることが明らかとなった。
(吾郷伊都子)
(マレーシア、米国)
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