ミラン米CEA委員長、グリアUSTR代表が相互関税を擁護、財源確保と貿易赤字解消の重要性を主張
(米国、世界)
ニューヨーク発
2025年04月09日
米国のドナルド・トランプ大統領が4月2日に発表した相互関税(2025年4月3日記事参照)について、各国が関税率削減に向け米国に交渉を申し入れている。そうした中、大統領経済諮問委員会(CEA)のスティーブン・ミラン委員長と米国通商代表部(USTR)のジェミソン・グリア代表が、相互関税の目的などについて語った。
ミラン氏は4月7日、首都ワシントンのシンクタンク、ハドソン研究所が主催したイベントに登壇し、相互関税は米国が準備通貨や安全保障といった「グローバルな公共財」のコストを回収するための手段であり、米国から恩恵を受けた国々は負担を分担すべきだと主張した(米国通商専門誌「インサイドUSトレード」4月8日)。その分担方法について、具体的には、米国がグローバルな公共財を維持する財源を確保できるよう、貿易相手国は米国への輸出に関税がかかることを受け入れること、市場を開放し米国からの輸入を拡大し不公平で有害な貿易慣行をやめること、防衛費を増額し米国からの調達を増やすことで米軍の負担を軽減しつつ米国内での雇用を創出すること、米国に投資し工場を建設すること、などを提案した。そのほか、米国の追加関税に対する報復措置は状況を悪化させるだけで、関税は非生産的、壊滅的に有害だとの考え方は「完全に間違っている」などとも主張した。ミラン氏は「関税の熱心な擁護者」とみられ、CEA委員長就任前には、「関税はうまく活用すれば、2017年税制改革法の3分の1に相当する財源を調達できるなど、目立ったインフレの上昇なく効果的に歳入を増やすことができる」と発言している(2024年12月27日記事参照)。
また、USTRのグリア氏は4月8日、上院で通商を所管する財政委員会の公聴会で証言した。公聴会では、議員から相互関税に関する質問が相次いだ(注)。これに対しグリア氏は、最終的な目標は米国内でより多くの製品を生産することだとしつつ、同時に新たな市場を開拓し、米国政府がより多くの歳入を確保することを望んでいると述べた。関税撤廃の可能性については、「国ごとに異なるだろう。非関税障壁や関税障壁、貿易赤字を完全に解決できない国もあれば、そうした問題に対処できる国も出てくるだろう」と述べた上で、「製造業の国内回帰が必要だ。農業貿易赤字を解消し、米国と貿易を行う国々は相互的でなければならない」と強調した(政治専門紙「ポリティコ」4月8日)。
現状では、世界共通関税と相互関税において緩和措置がとられているのは、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の原産地規則を満たした製品の輸入のみで、国別・製品別の適用除外は認められていない。適用除外や関税率の削減などを求めて米国との交渉を約70カ国が申し出ているとされるが、トランプ政権は、新たに発動した追加関税を減税措置のための恒久的な財源として位置付けているとの見方もあり、今後の行方は依然として不透明だ。
(注)共和党議員からも、関税賦課がいつまで続くのか、貿易赤字は必ずしも悪いことではない、関税によるインフレを懸念している、といった発言がみられた。
(赤平大寿)
(米国、世界)
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