国内小売業の懸念受け、少額輸入貨物に対する関税免除措置の見直しへ

(英国)

ロンドン発

2025年04月30日

英国のレイチェル・リーブス財務相は4月23日、少額輸入貨物に対する関税免除制度について見直しを行うことを発表した。現在、価額が135ポンド(約2万5,785円、1ポンド=約191円)以下、かつ物品税(Excise Duty)の対象外の物品を英国に輸入する際、関税が免除される仕組みとなっている。

英国政府によると、この制度を巡って国内の小売業から、外国で製造や在庫を行う企業に対する優遇措置になっているとの批判が集まっていることから、見直しに至ったとしている。同制度については、シーイン(Shein)やテム(Temu)などの中国の越境EC(電子商取引)プラットフォーム企業も利用しているとされており、以前から一部の国内小売企業から懸念が示されていた。

今回の発表に対して、英国小売業協会(BRC)は歓迎の意を表明し、国際的な通商環境の混乱の中で英国に流入するダンピングされた製品から消費者を保護するため、政府が迅速な対応をとったと歓迎した。

また、国内家電小売り大手カリーズのアレックス・バルドック最高経営責任者(CEO)も、各国による関税措置の導入、米国やEUによる少額輸入貨物への対応(2025年1月29日記事2025年2月7日記事参照)が行われる中、安全基準を満たしていない不当に廉価な輸入品が流入するリスクが高まっているとして、政府の対応を歓迎した。

英国政府はこれと合わせ、将来的なダンピング製品の流入などのリスク緩和に向け、貿易救済庁(TRA)による取り組みも発表した。中小企業を中心に企業との連携を強化し、不公正な貿易慣習に直面した場合の報告を支援する。また、リスクモニタリング機能を強化するほか、不公正貿易の恐れがある場合の調査や救済措置の実行にかかる期間の短縮を図るとしている。

(山田恭之)

(英国)

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