ミレイ大統領、追加関税の対象除外に向けて早期の対応を約束
(アルゼンチン)
ブエノスアイレス発
2025年04月14日
米国を訪問したハビエル・ミレイ大統領は4月3日、アルゼンチンから米国向けに輸出する実質的にすべての品目に米国側で10%の追加関税を課す世界一律のベースライン関税が課されていることを受け、これを回避するべく早期に対応することを約束した(注1)。
ミレイ大統領と共に米国を訪問したヘラルド・ウェルテイン外相は4月3日、ハワード・ラトニック商務長官、ジェイムソン・グリア米国通商代表部(USTR)代表と会談した。アルゼンチン外務省によると、会談後にウェルテイン外相は「USTRが指摘した問題を分析した結果、それに対応するべく調整中だ」と述べた。また、貿易分野における両国の合意形成を図るべく、貿易投資枠組み協定(TIFA)(注2)の枠組みの中で技術的協議を行うことを模索する、と述べた。
USTRが2025年3月に発表した「外国貿易障壁報告書(NTE)」では、アルゼンチンの主な貿易障壁として次の点が挙げられている。
- メルコスール加盟国の1つで内国貨物化された域外原産品を他の加盟国に再輸出する際、輸出先国で再度、関税が課税される。
- 消費目的の輸入品に3%の統計税が課税される。
- 商品輸入時に必要な、所得税の前払いについて輸入者への負担が大きい。輸出後の付加価値税の還付にも遅延が生じている。
- 多くの中古資本財の輸入が禁止されていることに加えて、輸禁対象外の中古品でも厳しい制限がある。中古・再生タイヤ、中古画像診断装置、中古自動車部品の輸入も禁止されている。再生医療機器の輸入は、輸入者が最終利用者(病院、医師など)である必要があるなどの条件が付され、輸入が難しい。
- 外貨による物品や財の購入に30%の所得・個人資産税が課税される。
- 輸入代金の支払いが依然として規制されており、前払いができず、取引先の信用供与を受ける必要があるなど余計な負担が生じている。
- 牛海綿状脳症(BSE)への懸念を理由に、2002年に米国産の牛および牛肉製品の輸入が禁止された。2018年に米国産牛肉の輸入は再開されたが、米国産の生きた牛の輸入は依然として禁止されている。
- アルゼンチン法の下で特許対象が大幅に制限されている。また、アルゼンチン政府が不正な商業利用や無許可についての長い審査プロセスの中で、受け取った未公開の試験データやその他のデータに対する保護が不十分。地理的表示(GI)の保護において透明性と適正手続きの確保も強く要請する。
- 偽造品、海賊版を取り締まるための現行の法体制と執行力が弱い。
ミレイ大統領は4月4日、訪米中に行ったスピーチの中で、「米国との非対称性を短期的に解決するために必要な措置を講じることを約束する」「TIFAの枠組みの中で約50品目の製品群における両国の関税を調整し、米国との貿易協定を通じて関税や貿易障壁を過去のものとする」と述べた。
(注1)アルゼンチンは相互関税の対象にはなっていない。
(注2)TIFAは、市場アクセス、知的財産権の保護、世界貿易機関やその他の多国間フォーラムにおける共通の目標に関する協力など、幅広い2国間経済問題について米国とアルゼンチンが協議する場として2016年に創設された。
(西澤裕介)
(アルゼンチン)
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