シェインバウム大統領、メキシコ移民の米国経済への貢献を訴え
(メキシコ、米国)
調査部米州課
2025年04月30日
メキシコのクラウディア・シェインバウム大統領は4月28日の記者会見で、メキシコ移民の米国経済への貢献について言及した。同大統領は、彼らが得た収入のうち、本国に送金されているのは20%程度で、残りの80%は貯蓄や消費、税金といったかたちで米国内にとどまっていると説明した。また「メキシコ移民が米国で労働を奪っているというのは大きな誤りだ。全世界の人々、特にメキシコと米国の全ての国民は、彼らの労働による貢献とその重要性を認識しなければならない」「移民を安易に犯罪と結びつける風潮に、われわれは断固反対する」と語気を強めた。
会見にはNPO法人「LATINO DONOR COLLABORATIVE」の代表者も出席し、次の報告を行った。
- 米国内のメキシコ移民は3,800万人以上で、有効な身分証明書を所持していないのは、そのうちの400万人にすぎない。
- 米国内のメキシコ移民による2024年のGDPは7,810億ドルに相当する。
- 有効な身分証明書を所持していない移民でも、2022年には約1,000億ドルの税金(257億ドルの社会保障費、64億ドルの公的医療保険料、18億ドルの失業保険料を含む)を負担している。
- 米国の労働力のうち、酪農の51%、食肉加工業の45%、建設業の29%、製造業と農業の20%、教育と福祉の15%、建設業の25%を移民が担っており、その多くはメキシコからの移民だ。
- 移民による犯罪発生率は米国民と比べて60%ほど低い。
- 2021年時点で、米国内の移民の5人に1人が経営者だった。
さらには、近年、米国ではメキシコを含むラテン系移民の人口が増加傾向にあるが、テレビや映画で彼らが取り上げられる機会は少なく、その内容も半数超がネガティブなものとなっていると警告した。
米国政府は3月4日からメキシコからの輸入品に25%の追加関税を課しているが(2025年4月4日記事参照、注)、その理由の1つは、メキシコから米国に流入する不法移民の対策が不十分なこととされていた。今回のメキシコ政府の対応は、米国が懸念する「不法移民」とは異なり、同国経済を牽引、下支えしているメキシコ移民の存在にあらためて触れ、世論を牽制する狙いがあるとみられる。
(注)3月7日から米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)原産品については、対象外となっている。ただし、米国の1962年通商拡大法232条に基づく追加関税が適用されている場合を除く。
(佐藤竣平)
(メキシコ、米国)
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