シンガポール副首相、JS-SEZは多国間連携のモデルに
(シンガポール、マレーシア)
シンガポール発
2025年04月25日
シンガポールのガン・キムヨン副首相兼貿易産業相は4月21日、世界で保護主義が台頭する情勢下で、ジョホール・シンガポール経済特別区(JS-SEZ)が多国間連携のモデルになるとの考えを示した。JS-SEZが設置されるジョホール州で同日開催したJS-SEZに関する投資フォーラムでの基調演説で述べた。
両国は1月にJS-SEZ設置について最終合意した。特区は、ジョホール州南部を中心に9つの「フラグシップエリア」(合計面積:3,571平方キロ)からなる越境経済圏となる(2025年1月9日記事参照)。ガン副首相は演説で米中対立や米国による関税措置で先行きが不透明化している現状に言及し、「JS-SEZがサプライチェーン強化を模索する企業にとって好機になる」と強調した。
同副首相は最近のジョホール州への進出事例として、シンガポールの農産品専門商社アグロコープが2024年11月、雪印メグミルクとの合弁で着工し、ジョホール州タンジョン・ラングサット工業団地内に建設する新工場に言及した。同工場では、豆類たんぱく質を中心に、植物由来の食品加工用原料を年間6,000トン生産する予定だ。同副首相は「両国にこれまでにない新たな投資をJS-SEZに呼び込みたい」と抱負を語った。
シンガポール拠点企業のJS-SEZ進出を支援するプロジェクト事務所設置
また、同副首相はJS-SEZの投資先としての競争力強化のため、(1)越境手続きの改善、(2)投資の承認や人材育成などビジネスのエコシステム強化、(3)ASEAN域内や、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)締約国、湾岸協力会議(GCC)諸国など共通の利害を持つ国々との経済連携とネットワークの拡大に取り組む方針を示した。同副首相によると、ビジネスエコシステムの強化の一環として、シンガポール貿易産業省(MTI)が同省傘下の経済開発庁(EDB)と企業庁(エンタープライズシンガポール)と共同で、シンガポール拠点の企業のJS-SEZ進出を支援するプロジェクト事務所を設置した。同事務所は、2月にジョホール州内に設置されたJS-SEZの投資家向け窓口となる「マレーシア投資促進センタージョホール支所(IMFC-J)」の活動を補完するとしている。
(本田智津絵)
(シンガポール、マレーシア)
ビジネス短信 5541bc9b50cc0046