中央アジアでの2024年のVC投資は前年比7%増加
(ウズベキスタン、カザフスタン)
タシケント発
2025年04月07日
KPMGは3月19日、中央アジア4カ国における2024年のベンチャーキャピタル(VC)動向に関する調査結果を発表した。それによると、2024年に同地域で行われたVCによる新興企業への投資額は、2023年と比較して7%増加し、8,900万ドルから9,500万ドルとなった。国別にみると、カザフスタンが最大のVC市場だ。前年比11.3%減少したものの、中央アジアにおけるVC投資総額の74.7%にあたる7,100万ドルを占めた(添付資料図参照)。
カザフスタン以外ではVC投資額の増加が見られた。ウズベキスタンは前年比2.8倍の1,750万ドル、タジキスタンは2.3倍の460万ドル、キルギスは54.5%増の170万ドルだった。
VC投資の課題は、後期段階の新興企業への投資の拡大だ。シンガポールとカザフスタンに拠点を置く投資会社インベストバンクのオルジャス・ジイェンクルCEO(最高経営責任者)は、中央アジアのVC投資は新興企業育成の初期段階(プレシード、シード)に集中しており、後期段階(シリーズA、B、C)の新興企業のニーズはまだ満たされていない、と指摘している。その結果、中央アジアの新興企業の多くは事業規模を拡大するための投資を欧米や中東など外国に求めざるをえず、有望新興企業の流出につながっているとみられる。
調査はKPMG、カザフスタンの調査会社ライズ・リサーチなどによって、トルクメニスタンを除く中央アジア4カ国を対象に行われた。
近年、中央アジアではVCが多様化している。地元のVCだけでなく、スタージョン・キャピタル(英国)、プラグ・アンド・プレイ(米国)、500グローバル(米国)など国際的なファンドも参入している。2024年3月には日本のSBIホールディングスが、シンガポール子会社であるSBIベンチャーアセットを通じ、中央アジアのフィンテックスタートアップへの投資を目的としたファンドで、スタージョン・キャピタルが運営するスタージョン・エマージング・オポチュニティーズIIに出資したことを発表した。
政府による新興企業向け資金提供の政策も、2024年末から2025年初めにかけて活発化している。カザフスタンのオルジャス・ベクテノフ首相は2024年12月、ベンチャー投資家らとの会合の中で、政府系VCファンドを設立する意向を明らかにした。ファンドには中期的に10億ドルの民間投資を呼び込む予定だ(2024年12月19日カザフスタン首相公式サイト)。ウズベキスタンでは2025年3月19日、シャフカト・ミルジヨエフ大統領が資本金総額にして5,000万ドルに上るベンチャー投資ファンド3本の設立を発表。さらに5,000万ドルを海外から調達したと述べ、これら資金を活用し、「起業家がハイテク・イノベーション分野のプロジェクトを立ち上げることができる」と支援に意欲を示した。
(ウラジミル・スタノフォフ)
(ウズベキスタン、カザフスタン)
ビジネス短信 54f2fab5fb53500a