春季合同経済予測、政権交代や米関税政策によるドイツ経済への影響を指摘
(ドイツ)
ベルリン発
2025年04月21日
ドイツの主要経済研究所(注)は4月10日、春季合同経済予測を公表した(プレスリリース
)。それによると、2025年の実質GDP成長率は0.1%で、前回の秋季経済予測より0.7ポイント下方修正した。2026年は1.3%で、前回予測を据え置き(添付資料表参照)、3月中旬に各経済研究所が公表した経済予測と大きな変化はなかった。
経済予測の冒頭では、ドイツを取り巻く課題として、政権交代による経済政策の不確実性の高まりや、米国の保護主義的な関税政策がドイツ経済に与える負の影響、米国の安全保障政策の転換による欧州内の安全保障体制の悪化、ドイツ企業がさらされている中国との競争、エネルギー集約型産業の後退などを列挙した。そのような中、米国の関税政策の影響でドイツの経済成長が鈍化するという見込みから、2025年の実質GDP成長率は前回予測より大きく下方修正した。他方、2026年は、2025年3月に上下両院で可決された拡張的な財政政策(2025年3月24日記事参照)が景気を刺激すると予想して、前回同様1.3%と見込んだ。財政出動による支出について、2025年中は見込めないが、2026年は国内総生産(GDP)の0.5%に当たる約240億ユーロの追加支出が見込まれ、実質GDP成長率は2025年から1.2ポイント拡大すると予測した。
ただし、以前から指摘されている構造問題は単なる支出増によって解決されるものではなく、今後は少子高齢化といった人口動態変化に合わせた労働市場や社会保障制度改革、電気料金助成の代わりにエネルギー生産コストを低減するなど、潜在力を強化する対策が求められるとしている。これについては、キール世界経済研究所(IfW)やライプニッツ経済研究所(RWI)なども、3月に発表した個別の経済予測で同様の指摘を行っていた。
インフレ率は引き続き低下しつつあり、2025年は2.2%、2026年は2.0%と予測している。
(注)合同予測は経済・気候保護省の委託を受け、国内の主要経済研究所のドイツ経済研究所(DIW)、ifo経済研究所、キール世界経済研究所(IfW)、ハレ経済研究所(IWH)、ライプニッツ経済研究所(RWI)が年に2回共同で作成している。
(打越花子)
(ドイツ)
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