ベネズエラ、米国に対抗して経済緊急事態令を発動へ
(ベネズエラ、米国)
調査部米州課
2025年04月22日
ベネズエラ政府は4月9日、ニコラス・マドゥロ大統領により、経済的な緊急事態を宣言する政令への署名が行われたと伝えた。11日には国会でも可決されている。同政令の目的は、米国による関税政策の脅威から国民と国内産業を保護することとしており、有効期間は官報での公示から起算して60日間だが、さらに60日間の延長も可能だ。マドゥロ大統領は政令への署名に先立ち、「米国政府は、国際的な通商上の権利を破壊しており、われわれは一丸となってそれに備えなければならない」と発言し、米国を強く非難した。
政令の内容は、緊急事態への対応を目的とする各種の規制強化や、徴税とその手続き、脱税の防止、雇用契約の締結、臨時予算の執行などの分野で、大統領権限を強める(注)というものだ。その他、「輸入品を代替する目的で国産品の購入比率を規定する」「生産性が高い器具の開発、非伝統産品の輸出拡大、新規雇用の創出、外貨の獲得などに資する国内の、または諸外国からの投資を促進する」といったかたちで、地産地消や外国直接投資の促進を目的とした内容も含んでいる。政令の内容を実行する上では、国軍や警察といった公的機関の協力も義務付けている。
CNNやinfobaeなどのメディアは、ベネズエラ政府の一連の発表について、専門家らの意見を引用しつつ、批判的に報じている。専門家らは、過去にベネズエラで同様の政令が施行された際にハイパーインフレを招いた事態などを引き合いに、「憲法上で規定される国会による統制を放棄し、大統領の権限を強めすぎるもの」として、問題点を指摘している。
これまで米国はベネズエラに対して、同国産の原油などを輸入する国に対する追加関税(2025年3月25日記事参照)や、ベネズエラに対する15%の国・地域別の相互関税の発表(2025年4月3日記事参照)といった措置を講じている。
(注)立法府の国会の承認が不要になることを指す。
(佐藤竣平)
(ベネズエラ、米国)
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