食品ロス防止法が施行、罰則も導入
(スペイン)
マドリード発
2025年04月25日
スペインで食品ロス防止法が施行された(2025年4月2日付官報、スペイン語)。同様の法律はフランスとイタリアで2016年に施行されており、これに続いた。
政府が2020年に策定した国家循環経済戦略「スペイン・サーキュラー2030」では、国連の持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット12.3「2030年までに食料廃棄を半減させる」に沿って、サプライチェーン全体で食品ロス削減を目指す。2030年までに1人当たりの食品ロス発生量を小売り・消費段階で50%、生産・流通段階で20%削減させる目標を設定しており、EUの廃棄物枠組み指令の改正案(2025年2月21日記事参照)を上回る削減率となっている。
同法では、生産から加工、小売り・流通、飲食業まで、全ての食品サプライチェーン事業者(小規模農業者と従業員9人以下の零細企業を除く)に対し、優先順位(食品加工→食品寄付→動物飼料→堆肥などへのリサイクル→バイオガスや燃料によるエネルギー回収)に従い、食品ロスの発生防止に努めることを義務付けている。また、店舗・施設面積が1,300平方メートル超の事業者については、2026年4月までに食品ロス防止の実施計画を策定し、慈善団体やフードバンクと余剰食品の寄付契約を結ぶことを義務付けている。なお、チェーン企業で、店舗・施設面積の合計面積が1,300平方メートルを超える場合は、計画策定や寄付契約の義務が適用される。飲食店は持ち帰りが可能なことを明示しなければならない。これらの義務に違反した場合は、最高50万ユーロの罰金が科される。
また、グッドプラクティスとして、消費・賞味期限が近い食品や、旬の地産食材、有機食品、「形の悪い」規格外農産物の販促を行うことなどを提示しているほか、政府は事業者が賞味・消費期限を延ばせるよう後押しする。
なお、同法は2023年の解散・総選挙によって議会で再審議となり、施行が大幅に遅れていた、カタルーニャ州では同様の法令が2020年から施行されており、流通大手などでは既に全国的に食品ロス対策が講じられている。また、デンマーク発の「Too Good to Go」をはじめ、飲食店・小売店の売れ残り食材購入アプリや、規格外野菜を販売する農家と消費者をつなぐ「タルクアル(Talkual)」など、食品ロス解決型のデジタルプラットフォームも普及している。また、学校や高齢者施設で余った給食をパック詰めにして自動販売機で1ユーロ(または無料)で提供するバスク州の「レックスケータリング(Rexcatering)
」には地元の自治体が多く参加している。
流通大手の見切り品コーナー(ジェトロ撮影)
(伊藤裕規子)
(スペイン)
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