セルビア議会が新内閣承認、欧州路線の進展とともに東側諸国との関係も重視
(セルビア、ロシア)
調査部欧州課
2025年04月25日
セルビア議会は4月16日、ジュロ・マツット首相率いる新内閣を承認した。議会(定数250)では、出席議員199人のうち、公開投票によって153人が新内閣に賛成、46人が反対した。51人は欠席した。
セルビアでは、2024年11月1日に北部ノビサドで駅舎の屋根が崩落する事故が発生した。現場のノビサド駅は中国の「一帯一路」計画の下、セルビアの首都ベオグラードとハンガリーの首都ブダペストを結ぶ高速鉄道計画の一環で、改修工事が行われていた。事故原因を巡り、工事の管理上の問題や政府の汚職疑惑から、全容解明を求める反政府デモがセルビア全土に波及していた。デモ拡大の責任を取るかたちで1月28日に、当時のミロシュ・ブチェビッチ首相は辞意を表明し、新政権を選出するため、4月6日にアレクサンダル・ブチッチ大統領はマツット氏を次期首相に指名していた。
マツット首相は内分泌学が専門の大学教授で、ベオグラード大学医学部出身、ボローニャやジュネーブ、ウプサラ、オックスフォードでの大学院教育やジュネーブ大学と世界保健機関(WHO)主催の生殖医療専門課程を修了している。ベオグラード大学付属の国立総合病院の内分泌腫瘍・遺伝性がん症候群科部長で、2019年から同大学で教えていた。同首相は無党派で、医学の道を進んできた人物だが、政治に関してはブチッチ大統領が主導する政治運動グループの創設メンバーの1人でもある。
マツット首相は4月15日に演説を行い、経済成長のためにはインフラへの戦略的な公共投資や産業の近代化、持続可能な経済への移行、情報通信技術(ICT)のような高付加価値分野の発展が条件になると述べ、欧州統合や地域協力の強化に尽力していくと強調した。ブチッチ大統領はマツット首相の指名に関する記者会見で、欧州路線の進展を加速させると同時に、東側の伝統的な友好国との関係を維持することや、国内外からの投資水準を回復させることが課題と述べた。
セルビアはEU加盟候補国としてEUとも継続的に対話しているが、ロシアとの関係も重視している。ブチッチ大統領は5月9日にモスクワで行われる戦勝記念パレードに出席し、プーチン大統領と会談する予定だ。ブチッチ大統領はパレードにセルビア軍も参加する意向を示している。これに対し、EU加盟国からは、ロシアが欧州のウクライナで本格的な戦争を繰り広げている現状を踏まえ、9日のパレードへのいかなる参加も軽視すべきではないと警戒する声が上がっている。
(近藤慶太郎)
(セルビア、ロシア)
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