アルゼンチン政府とIMF、新たな支援でスタッフレベル合意
(アルゼンチン)
ブエノスアイレス発
2025年04月11日
IMFは4月8日、アルゼンチン政府と、IMF理事会の承認を条件として総額200億ドルの拡大信用供与措置(EFF)による48カ月間の支援と、そのための包括的な経済プログラムについて、スタッフレベルで合意したと発表した。今後数日のうちに、IMF理事会は双方の取り決めについて検討を行うとしている。
合意内容の詳細は明らかにされていないが、アルゼンチンが3月11日に公布した必要緊急大統領令(DNU)179/2025号に、当該時点のIMFとの合意事項が明らかにされている。同大統領令によると、IMFの支援枠組みはEFFによるもので、返済期間は10年間。これによって得る資金は、新たな支援開始日から4年間に満期を迎えるIMFに対する債務の支払いや、中央銀行が保有するドル建て非譲渡手形の削減に充てられる。ドル建て非譲渡手形は、国庫が対外債務支払いを目的に、中銀からドル建ての流動資産を引き出すために用いられてきた。ドル建て非譲渡手形はドルに交換されるため、中銀のバランスシートが改善するとみられている。
なお、この大統領令は、政府が上下両院の承認を得ることなくIMFとの合意書に署名する権限を与えるものだ。2021年3月3日に公布された公的債務の持続可能性強化に関する法律(法律27612号)第2条は「IMFとの間で実施される資金調達プログラムには、法律による承認が必要」と定めているが、政府は行政府に署名の権限を与えることに問題はないとした。DNUは上下院両院で否決されると、その効力を失うが、下院が3月19日にDNUを承認したため、政府は署名の権限を確実なものとした。
IMFと合意した包括的な経済プログラムの内容は明らかになっていないが、通貨切り下げへの警戒から、DNU公布後は公式為替レートと非公式の闇レート、いわゆるブルーレートの乖離幅が広がる動きが見られた。中銀は公式為替レートを毎月1%切り下げるクローリングペッグを採用しているが、3月に中銀が実施したエコノミストらを対象とした主要マクロ経済指標の予測値に関するアンケート調査(REM)と、ラテンアメリカ経済調査財団(FIEL)によると、2025年末の公式為替レートはそれぞれ1ドル1,253ペソ、1,390ペソ(期中平均値)となっている。3月末日の公式為替レートは1,069.03ペソのため、毎月1%の切り下げペースを維持すると、12月末には1,169.18ペソとなるため、7〜19%切り下がる予測となっている。
(西澤裕介)
(アルゼンチン)
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