トランプ米政権の追加関税へのブラジルの対抗法案、知的財産関連の報復措置も可能
(ブラジル、米国)
サンパウロ発
2025年04月07日
ブラジル連邦議会は4月3日、米国のドナルド・トランプ大統領が4月2日に世界共通関税と相互関税を課す大統領令を発令したことを受け、外国による貿易の制限に対する報復措置を可能とする法案第2088号を可決した(2025年4月4日記事参照)。今後、大統領の承認を経て法制化される。同法案では、ブラジルの輸出品が輸出先国で高関税など不当な制限をかけられた場合、ブラジル側も相手国の輸出品に同様の措置を導入することが認められる。こうした対応で状況が改善しない場合、相手国企業に対して、ロイヤルティー送金中止や、特許の無効化など知的財産関連の制限を課すこともできる。
上院議会で法案の取りまとめ役を務めたテレーザ・クリスチーナ議員は上院公式サイト(4月1日付)で、「(貿易を巡る問題に対しては)交渉することが理想だ。しかし、ブラジル製品への制限が導入された場合、報復措置が必要だ」と述べた。また、クリスチーナ議員は上院のユーチューブ公式チャンネル(4月1日付)で、「実際に(同法を)使うとは限らないが、交渉に応じる場合、多様なツールを用意することが重要だ。この法律によってブラジル政府の立場が強化される。認められる措置の中では、特許の無効化が最も厳しい措置で、特に先進国への影響が大きいだろう」と説明した。
副大統領兼開発商工サービス副大臣のジェラウド・アルキミン氏は、現時点では同法を基に米国に対抗措置を講じることは考えていないと明らかにしている。しかし、現地紙「フォーリャ」(4月3日付)によると、政府が知的財産関連の報復措置をとった場合のシナリオを懸念する声もある。例えば、デマレスト弁護士事務所のジョゼ・ディアス弁護士は同紙のインタビューで、「アグリビジネスや医薬品産業では、競争力を維持するために投資やイノベーションが不可欠だが、今回の法律を基に報復措置として知的財産保護を緩和した場合、権利侵害のリスクが高くなり、外国企業にとってブラジルで最先端の技術やイノベーションに投資する関心が弱まるだろう」と指摘している。
(注)下院議会公式サイト(4月3日付)によると、同法案はもともと、EUの森林破壊防止のためのデューディリジェンス義務化に関する規則に対抗するものとして提出されたが、米国の第2次トランプ政権による追加関税発表を受けて、審議が加速した。EUの森林破壊防止のためのデューディリジェンス義務化に関する規則は、EU域内で販売、もしくは域内から輸出する対象品が森林破壊によって開発された農地で生産されていないこと(森林破壊フリー)を確認するデューディリジェンスの実施を企業に義務付けるもの。大企業には2025年12月30日から、中小企業には2026年6月30日から適用することになる。パーム油、牛肉、木材、コーヒー、カカオ、ゴム、大豆などブラジルの主要輸出品が対象となるため、ブラジルでの注目度が高い。
(エルナニ・オダ)
(ブラジル、米国)
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