第1四半期の自動車生産は好調も、輸出は前年同期を下回る
(メキシコ、米国)
メキシコ発
2025年04月16日
メキシコ国立統計地理情報院(INEGI)が4月7日に発表した自動車統計(大型バス・トラックを除く)によると、3月のメキシコの自動車生産と輸出、国内販売は前年同月の記録を上回った。生産台数は前年同月比12.1%増の33万8,669台、輸出は同3.8%増の29万6,964台、国内販売は12万7,360台で同1.3%増だった。
2025年1~3月(第1四半期)の統計を振り返ると、生産台数は前年同期比で増加した一方、輸出台数には若干の減少がみられた。生産台数は97万3,485台と前年比4.8%増で、2019年1~3月の生産台数に次いで過去2番目に生産台数の多い第1四半期となった。1月時点での完成車工場の稼働率は90.3%と、9割を超えている。
一方の輸出は、3月単月では前年同月比で増加したが、第1四半期の合計は前年同期比6.0%減の77万5,866台だった。1月が13.7%減、2月は9.2%減で、2カ月連続で前年の輸出台数を大きく下回ったことが影響した。米国のドナルド・トランプ大統領による追加関税賦課発表を受けて、多くの完成車メーカーが輸出を控えたことが影響したという見方もある。しかし、メキシコ自動車工業会(AMIA)のロヘリオ・ガルサ会長は4月7日に行った記者会見で、輸出台数の減少について「(前年同期比はマイナスだが)、比較対象としている2024年1~3月は過去最大レベルの輸出台数を記録した第1四半期だった(注)。今年(2025年)の水準でも、過去5番目に輸出台数が多い」とコメントし、追加関税の影響には言及しなかった。多くの完成車メーカーで輸出台数が伸び悩んだ時期だったが、その中でトヨタは、ピックアップトラック「タコマ」の輸出増によって、前年同期比2.2倍を記録した。
鉄鋼・アルミ製品向け関税の影響、約30億ドルとの試算も
メキシコ自動車部品工業会(INA)の試算によると、3月12日から発効した米国の1962年通商拡大法232条に基づく鉄鋼・アルミニウム製品の米国輸入に対する追加関税25%の影響で、メキシコから米国に輸出している対象製品(鉄鋼・アルミ製自動車部品を含む)は合計29億3,900万ドルの価格上昇が見込まれるという。これらを踏まえて、INAは「自動車部品のサプライヤーがこの追加コストを全て吸収することは到底不可能だ」としており、最終消費者が購入する完成車の価格は1台当たり約3,000ドル高騰すると試算している。
(注)2024年1~3月の輸出台数は825,707台。2019年1~3月の842,528台(第1四半期の輸出台数のうち過去最高)に迫る数字だった。
(渡邊千尋)
(メキシコ、米国)
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