3月の米雇用統計、新規雇用者数は22.8万人増と労働市場は堅調さ保つ
(米国)
ニューヨーク発
2025年04月07日
米国労働省は4月4日、3月の雇用統計を発表した。失業率はわずかに上昇したものの、非農業部門の新規雇用者数は市場予想を大きく上回り、トランプ政権による相互関税発表前の時点では、雇用は堅調さを保っていることが確認された。
就業者数(前月差20万1,000人増)、失業者数(同3万1,000人増)、労働参加率(62.5%、前月から0.1ポイント上昇)を踏まえた失業率は4.2%(前月4.1%)と、市場予想(4.1%)をわずかに上回った(表1、図1)。非自発的にパートタイムを選択している者などを加えた広義の失業率(注)は7.9%で、前月から0.1ポイント低下した。
非農業部門の雇用者数の伸びは22万8,000人増となり、市場予想(13万7,000人)を大きく上回った。なお、2月の数値は15万1,000人増から11万7,000人増に、1月の数値は12万5,000人増から11万1,000人増に、それぞれ下方修正された。3カ月平均では17万3,000人増で、2024年平均(16万8,000人増)とほぼ同水準の強さを保っている。
新規雇用者数増の内訳をみると、民間部門は20万9,000人増、政府部門は1万9,000人増となっている(添付資料表2参照)。政府部門では、連邦政府が4,000人減だ。トランプ政権は連邦政府職員数の削減を進めているが、雇用統計では、解雇されたものの継続的に退職金を受け取っている者は雇用者としてカウントしているため、この数値はやや過小評価されている可能性もある。
民間部門では、財部門が1万2,000人増で、製造業(1,000人増)、建設業(1万3,000人増)ともに増加した。サービス部門は19万7,000人増で、ヘルスケアを中心とした教育・医療(7万7,000人増)のほか、娯楽・接客業(4万3,000人増)、小売業(2万4,000人増)、運輸・倉庫業(2万3,000人増)などが伸びた(表2、図2)。小売業は、大手スーパーのクローガーのストライキが解消したことによる増加とみられる。また、運輸・倉庫業の増加は関税引き上げ前の駆け込み輸入増が影響している可能性がある。
平均時給は36ドル(前月35.9ドル)で、前月比0.3%増(前月0.2%増)、前年同月比3.8%増(前月4.0%増)だった(添付資料表1参照)。市場予想は前月比0.3%増、前年同月比3.9%増だった。業種別にみると、製造業(前月比0.7%増、前年同月比4.6%増)の伸びが目立った。
3月の雇用情勢は新規雇用者数が強い伸びを見せるなど、雇用は比較的堅調さを保っていることが確認された。しかし、足下では関税引き上げを受け、企業が雇用にさらに慎重になっていることを示すデータもある(2025年4月2日記事、2025年4月4日記事参照)。現時点では、採用抑制による自然減を志向する企業が多いものの、4月2日に発表された相互関税(2025年4月3日記事参照)を受け、米国自動車ビッグ3の1社、ステランティスが米国内の5カ所の工場で900人を一時解雇すると発表するなど、レイオフも見られ始めており、こうした動きがどこまで強まるのか注目される。
(注)失業者に加え、「現在は仕事を探していないが、過去12カ月の間に求職活動を行った者」と「フルタイムを希望しているものの、非自発的にパートタイムを選択している者」を合わせて算定した数値。
(加藤翔一)
(米国)
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