米自動車業界団体、「自動車関税で低価格帯市場に大きなストレス」
(米国、日本)
ニューヨーク発
2025年04月07日
ゼネラルモーターズ(GM)やトヨタなど主要自動車メーカーで構成する米国最大の自動車業界団体の自動車イノベーション協会(AAI)のジョン・ボゼーラ会長兼最高経営責任者(CEO)は4月3日、1962年通商拡大法232条に基づいて同日に発動された自動車関税(2025年4月3日記事参照)に関し、CNNのインタビューに答えた。
ボゼーラ氏は「自動車製造業は、大規模な敷地や工場設備など資産が多く、利益率の低いビジネスだ。大規模なサプライチェーンを有する業界でもあり、(生産体制の)『調整』(注1)には時間がかかる。その前に車両価格は上昇し、販売台数と売上高は減少するだろう」との見通しを述べた。また「われわれは米国に強力で堅固な自動車製造部門を作るという大統領の目標を共有し、米国への投資を増やしている。しかし、どれだけ早くできるのか、米国の消費者にとって手頃な選択肢を引き続き提供できるのか、という点に関しては、答えが出ていない。(特に)低価格帯の市場が大きなストレスにさらされ、消費者の選択肢が減ると危惧している」と付け加えた。また、カナダ、メキシコを含む貿易相手国が米国を除くかたちで貿易協定を結ぶ可能性も指摘するとともに、米国の貿易相手国が報復関税措置を発動することで米国からの輸出車両がさらに高額になり、国外での売り上げが減少するとして、あらゆる方面からの混乱を指摘した(注2)。
自動車関税に関しては、完成車は4月3日から25%の追加関税が課されており、自動車部品にも5月3日から同率の追加関税が課されるが、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の原産地規則を満たす完成車や部品に関しては、別途要件を定めるなど、複雑な仕組みとなっている(2025年4月3日記事参照)。こうしたことを受け、米自動車部品工業会(MEMA)は4月4日、会員向けにウェビナーを開催し、一連の関税措置に関する解説を行うなど、積極的な情報提供を行った。また、同日にアンケートを行い、8割以上の回答者が直近3カ月間で、今後1年間の見通しがより悲観的になっているといった実態も共有した。また、日本自動車工業会(JAMA)も4月4日、日米両政府に対し、生産的な対話の推進を求める声明を発表した。
自動車関税の影響に関しては 、ステランティスが4月3日、カナダとメキシコにある組立工場の各1カ所での生産を一時停止し、米国で900人を解雇することが報じられている(ロイター4月4日)。アントニオ・フィロサ米州最高執行責任者(COO)は「関税が当社の事業に及ぼす中期的、長期的影響を引き続き評価しているが、幾つかの即時措置を講じることも決定した」と述べている。また、GMが米国インディアナ州でのトラック生産を増加させることなども報じられており、今後の各社動向が注目される(同4月3日)。
(注1)ドナルド・トランプ大統領が3月26日に大統領布告「Adjusting Imports of Automobiles and Automobile parts into the United States」(米国への自動車と自動車部品の輸入調整)を発表した。
(注2)2024年の米国の自動車輸出台数(HTSコード8703と、商務省が「ライトビークル」と定めるHTS8704に含まれる一部の車両の合計)は247万台。
(大原典子)
(米国、日本)
ビジネス短信 2245e604e4007748