ロシア最高裁、タリバンのテロ組織指定解除を決定

(ロシア、アフガニスタン)

調査部欧州課

2025年04月21日

ロシア連邦最高裁判所は4月17日、アフガニスタンの実権を掌握するイスラム主義勢力タリバンに対する活動禁止措置の停止を決定した。タリバンは2003年にロシアでテロ組織に指定され、ロシア国内での活動が禁止されていた。今回の決定を受け、連邦保安局が公表する指定テロ組織リストからタリバンが除外される。タリバンをテロ組織指定から解除することによって、ロシアはアフガニスタンとの経済関係構築や、同国を通る物流ルートの開発を推進する考えだ。

ロシア外務省は同日、タリバンのテロ組織指定解除に関する声明を発表した。アフガニスタンと麻薬対策やテロ対策で協力するほか、貿易・投資関係の構築に特に重点を置く意向を表明した。また、アフガニスタンの地政学的立地を踏まえ、エネルギーやインフラプロジェクトの実施の可能性もあるとした。ロシアは中央アジアとアフガニスタンを経由する輸送ルート開発に関心を寄せる。ロシアとウズベキスタンの運輸省と両国の鉄道会社は4月8日、アフガニスタン横断鉄道建設プロジェクト実施に関する協力文書を締結した。今後、両国の専門家が協力して実施可能性調査を行う。

タリバンは2003年2月の最高裁の決定によってテロ組織に指定され、ロシア国内での活動が禁止されてきた。指定の理由として、タリバンがロシア南部チェチェン共和国の非合法武装組織との関係を維持し、テロの手法を用いて中央アジア諸国でイスラム組織による権力掌握の機会を模索していることを挙げていた。

しかし、2024年に入り、ロシアの外務省と法務省がウラジーミル・プーチン大統領に対して、タリバンを指定テロ組織リストから除外するよう提案していたことが明らかになった(「タス通信」2024年5月27日)。プーチン大統領は5月、「アフガニスタンには問題があるものの、現政権と関係をどう構築するかは別の問題だ」と述べ、タリバンとの関係構築の必要性を指摘し、指定解除に前向きな姿勢を示していた。その後、12月に指定テロ組織の活動禁止措置を停止することを可能にする改正法が成立し、2025年3月に検事総長が最高裁にタリバンの活動禁止措置の停止を求める申請書を提出していた。

(浅元薫哉)

(ロシア、アフガニスタン)

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