MASが金融緩和を維持、物価上昇幅は大幅に縮小
(シンガポール)
シンガポール発
2025年04月16日
シンガポール通貨金融庁(MAS、中央銀行に相当)は4月14日、通貨シンガポールドル(Sドル)の名目為替実行レート(NEER)に関し、2025年1月の前回発表時に続き、誘導目標帯(許容変動幅)の傾斜幅をわずかに引き下げる金融緩和政策を維持すると発表した(MASプレスリリース)。なお、NEERの誘導目標帯の幅と中央値に変更はない。MASは政策金利を設定せず、Sドルの名目実効為替レートの誘導目標(政策バンド)を定める金融政策を実施しており、2025年1月に4年10カ月ぶりに金融緩和政策を導入した(2025年1月28日記事参照)。
第1四半期のMASコア・インフレーション指数(注1)は、2024年第4四半期の前年同期比1.9%から、2025年1~2月期には同0.7%へと大幅に低下した。同庁は要因として、国内の飲食サービスおよび小売品への消費支出の低迷と、コスト圧力の緩和が、消費者物価上昇を抑制したことを挙げた。2025年通年では前年比0.5~1.5%と予測し、2025年1月時点の予測(同1.0~2.0%)から引き下げた。
MTIはGDP成長率予測を下方修正
貿易産業省(MTI)が同日に発表した2025年第1四半期(1~3月)のGDP成長率の速報値(注2)は、事前の予測を下回る前年同期比3.8%の成長だった(MTIプレスリリース)。前期比では、季節調整済みで0.8%の縮小となった。今回の速報値および外部環境の不確実性を考慮し、2025年のGDP成長率予測は前年比0.0~2.0%に引き下げられた。
MASは発表内で、米国関税についても言及し、世界経済と国内経済の動向を注意深く監視し、インフレと成長に対するリスクに引き続き警戒を続けるとした。
(注1)消費者物価指数(総合)から住宅関連費と自家用交通関連費を除いた指数。
(注2)速報値は主に2025年1~2月の統計に基づく。
(中島諒士)
(シンガポール)
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