中国EU商会、「中国製造2025」に関する報告書を発表、中国政府に対し、外部影響を考慮した持続的なアプローチを提言

(中国、EU)

北京発

2025年04月23日

在中国の欧州企業の団体、中国EU商会は4月16日、「中国製造2025 テクノロジーリーダーシップのコスト」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますと題した報告書を発表した。報告書は「中国製造2025」(注)計画導入後の10年間における在中国欧州企業の動向をまとめたものとしている。「中国製造2025」の実施により中国の先端分野の製造技術は著しい発展を遂げ、中国が世界の製造大国となり、複数の主要技術分野においてEUを凌駕(りょうが)するに至った、と分析している。

他方で、報告書では「中国製造2025」がEUと中国の経済関係にとって、機会をもたらしたものの、中国の過剰生産能力や過度な競争(内巻)により、欧州企業へ長期的でネガティブな影響を及ぼしている、と指摘した。中国から特定製品の輸出が増加し、一部の欧州産業に脅威を与えているケースがあるとし、電気自動車(EV)、太陽光パネル、通信ネットワーク機器など「中国製造2025」において発展させるとした分野において、EUは中国製品に対する防衛措置を講じるなど(2024年12月19日付地域・分析レポート参照)、繰り返し対応する姿勢を示し、欧州市場のゆがみを緩和しようと努めてきたとしている。

また、中国がこれまで独自開発の技術を欠いていた分野で成長を遂げ、高度な技術力を達成した、あるいはほぼ目標に到達した段階で、多くの欧州企業は徐々に中国市場へのアクセスを失い、さらには中国市場から撤退するといった状況に陥っていると指摘した。

また、中国政府は広範囲な補助金などの支援策を講じているものの非効率的で、「中国製造2025」の重点分野の一部は依然として後れを取っていると指摘し、同計画が中国の自立的発展という目標を達成するための特効薬にはなっていないとした。さらに、「中国製造2025」が成功を収めた分野においても、国内経済の課題と世界的な貿易摩擦を引き起こしたという事実もあり、このような政策を継続することは極めてリスクの高い戦略になると主張している。

中国EU商会のイェンス・エスケルンド会頭は報告書で、中国は「中国製造2025」型の政策を継続するか、外部からのネガティブな要因を最小限に抑えつつ、技術面の自主的発展に対しより的を絞った持続可能なアプローチを取るかという選択に直面している、と分析した。また、世界の貿易システムが大きな課題に直面している今、後者の選択肢は、中国にとってEUなど信頼に足るパートナーに対し、長期的で互恵的な貿易関係の構築と、投資家が求める安定性と予測可能性を備えたビジネス環境の確保に努めていることを示す機会になる、とコメントした。

(注)「中国製造2025」は、2015年から2025年までの10年間における製造業の発展戦略を示したもの。2015年5月に中国政府より公表され、10の重点分野を掲げている(同計画の詳細は2015年6月12日2015年6月15日記事参照)。2015年3月25日に当時の李克強首相が国務院常務会議を主宰し、製造業の高度化の実現に向けた計画の推進を加速させることを指示したことに始まる。

(亀山達也)

(中国、EU)

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