エジプト内閣、2025/2026年度予算案を承認、医療、低所得者層支援に重点
(エジプト)
カイロ発
2025年04月08日
エジプト内閣は3月26日の閣議で、2025/2026年度予算案を承認した(注)。内閣府の発表によると、歳入は前年度比19%増の3兆1,000億エジプト・ポンド(約9兆3,000億円、EGP、1EGP=約3円)、歳出は前年度比18%増の4兆6,000億EGPだ。
アハメド・クーチュク財務相は、新年度予算案が医療、保険に重点を置いていると述べた。医薬品や医薬品原材料、医療機器とそのメンテナンスへの配分を532億EGPに増額して、医療サービスの向上を図る。また、保険のない低所得者向け医療費補助に151億EGP、学生や障害のある女性、子供向けの健康保険と、「総合健康保険」に59億EGPをそれぞれ配分し、あらゆる社会的階層への医療サービスの提供を目指す。
クーチュク財務相はさらに、同予算案が国民の生活水準向上に重点を置くことを強調した。歳出のうち7,326億EGPを低所得者層向け社会保障に充てる(前年度の同予算は6,360億EGP)。社会保障年金「タカフルとカラマ(連帯と尊厳)」に対する財政配分を前年度予算400億EGPから35%増額するとともに、2025年4月から、同年金の現金給付額を25%増額する。また、エネルギー安定供給のため、石油製品に750億EGP、家庭への天然ガス供給支援に35億EGPを割り当てるとした。前年度は原油価格上昇と為替の切下げにより、化石燃料補助予算は1,540億EGPに上り、実際の支出は日本円で1兆円以上とされる(2024年11月7日記事参照)。2025/2026年度は予算が大幅に縮小されており、IMFの金融支援の条件となっている化石燃料補助金の削減が実現する見通しだ。
また、同予算案では、公的債務残高をGDP比82.9%まで削減することを目標とした。IMFは、同国の公的債務残高は2023/2024度年時点でGDP比90.9%に上り、2024/2025年度の財政健全化の進展は当初予測に達していないと指摘する。エジプト中央銀行によると、2024年6月末の利払い額は92億ドルに上るなど、財政は依然として厳しい状況にある。GDP成長率の回復や、GDP比債務残高比率の低下など、回復の兆しはみられてはいるものの、さらなる経済改革が求められる。
(注)エジプトの会計年度は7月始まり。2025/2026年度は2025年7月~2026年6月。
(塩川裕子)
(エジプト)
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