米大手製薬企業アボット、イリノイ州とテキサス州の施設拡張で5億ドル投資
(米国)
シカゴ発
2025年04月18日
米国の大手製薬・ヘルスケア企業のアボット(本社:イリノイ州)は4月16日、2025年第1四半期決算の結果とともに、イリノイ州とテキサス州で製造・研究開発施設拡張に総額5億ドルを投資すると発表した。この投資は、既存の工場の拡張と米国の血液供給のスクリーニングを担う同社の輸血事業の研究開発の強化を目的としている(クレインズシカゴビジネス4月16日)。同社はこの事業拡大にともない、イリノイ州で200人、テキサス州で100人の雇用をする予定で、施設は2025年末までに稼働する見込みだ。
この発表は、医薬品に対する関税賦課が一時的に停止される中で行われた。現在、医薬品は、4月5日に発動した一律10%のベースライン関税の対象から除外されている(2025年4月3日記事参照)。
ドナルド・トランプ大統領は4月8日に「近日中に医薬品に対する重大な関税を発表する」と述べ、米国商務省産業安全保障局(BIS)は1962年通商拡大法232条(以下、232条)に基づき、医薬品の輸入が米国の国家安全保障に及ぼす影響を判断するための調査を開始したと発表した(2025年4月15日記事参照)。
同社のロバート・B・フォード会長兼最高経営責任者(CEO)は、決算報告後のアナリストとの質疑応答の中で、「関税は2025年には(自社に)数億ドルの影響を与えるだろう」と述べ、「おそらく第3四半期ごろからその影響が見えてくるだろう」と続けた。また、「関税はなくならないし、しばらくは継続される。どうやって軽減するかについて長期的・持続可能な方法を考えなければならない」とし、「在庫の確保もいくらか実施するが、われわれはグローバルな製造ネットワークを可視化するなどして、関税を軽減する対策を実施する十分な体制を備えている」と述べた。同社は、日本や中国を含む世界中に89カ所の製造拠点を持ち、そのうち35カ所は米国にある。
(星野香織)
(米国)
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