シンガポール、米国関税措置に伴い政労使タスクフォース設置へ

(シンガポール)

シンガポール発

2025年04月10日

シンガポールのローレンス・ウォン首相兼財務相は4月8日の国会で、米国の関税措置を受けて、企業や労働者支援のためのタスクフォース設置を発表した。タスクフォースはガン・キムヨン副首相兼貿易産業相が率い、政府機関やシンガポール・ビジネス連盟(SBF)、全国労働組合会議(NTUC)など、政労使代表で構成される予定だ。

米国は4月2日(シンガポール時間3日)、シンガポールに対して10%のベースライン課税を課すと発表し、ガン副首相は3日に失望を表明していた(2025年4月7日記事参照)。ウォン首相は、米国の関税措置に伴って「シンガポール経済がテクニカルリセッション(景気後退)に陥るか、陥らないかは不明だが、打撃を受けるのは確実だ」との認識を示した。その上で、貿易産業省が、2025年の公式成長率予測「1.0~3.0%」を下方修正する可能性が高いと述べた。

同首相は、米国が今回、中国に対し50%の追加関税を課すとの方針に、中国が対抗する姿勢を示したことに言及。「米中の緊張関係が悪化すれば、世界にとって破滅的な結果になる」と懸念を示した。さらに、「予測可能でルールに基づいていた世界が後退し、不安定で、予測不可能なショックが頻発する時代を迎えている」と警告した。

ASEANの地域統合を加速へ

同首相は演説の中で、ASEANの経済統合を強化していく意向を示した。同首相は4月4日に、2025年のASEAN議長国であるマレーシアのアンワル・イブラヒム首相と電話会談し、ASEANの経済統合を加速することで合意。また、同月10日のASEAN臨時経済相会合で、域内の貿易強化に向けた新たな方策を模索し、地域統合に向けた共通の意気込みを示したい考えを表明した。

同首相は「米国が保護主義となっても、他の国々が追随する必要はない」と強調した。その上で、同じ考えを持つ国々との戦略的な関係を強化し、「多国間システムの主要部分を維持する」と語った。同首相は4月7日に英国のキア・スターマー首相と会談したことに言及し、今後も同様の会談を予定していると説明した。

(本田智津絵)

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