米FRB、政策金利据え置きも量的引き締めのペースを減速
(米国)
ニューヨーク発
2025年03月21日
米国連邦準備制度理事会(FRB)は3月18~19日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利のフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を4.25~4.50%で据え置くことを決定した(添付資料図参照)。他方、2022年6月から実施していた量的引き締め(QT)のペースを減速させ、国債の月額償還上限を250億ドルから50億ドルに緩めることとした。QTの減速については、前回のFOMC
でも「債務上限問題に関連して、今後数カ月、準備金が大幅に変動する可能性があるため、この問題が解消するまでバランスシートの縮小を一時停止または減速させることが適切」との議論があり、これが反映された。なお、これらの決定については、クリストファー・ウォラー理事が、QTは現在の縮小ペースを維持すべきとして反対票を投じた。
声明文では、経済や雇用、物価に関する現状認識には変更がなかったものの、今後の見通しについては、トランプ政権の関税政策などを念頭に「不確実性が増している」として前回よりも警戒感を強めたほか、「雇用とインフレ目標に対するリスクは均衡している」との文言を削除した。
今回は、FOMC参加者による経済見通しも示された(添付資料表参照)。政策金利は前回2024年12月時点の見通しから変更はなく、2025年は2回分の利下げが見込まれている。ただし、内訳では2025年は利下げなしを予想する者が4人(前回1人)、1回が4人(前回3人)、3回以上が2人(前回5人)と全体的にタカ派に振れる者が増加。2026年についても同様の傾向だ。
成長率は、2025年が1.7%(前回2.1%)、2026年以降は1.8%に下方修正された。インフレ率は、2025年のコアインフレ率が2.8%(前回2.5%)に上方修正されたが、それ以降は前回から変更はない。ジェローム・パウエル議長は記者会見で、関税引き上げが物価に与える影響について「ここ数カ月の財価格の上昇の一部は明らかに関税引き上げによるもの」と述べるなど一定の影響があることは認めつつ、長期の期待インフレ率の安定を根拠に長期的には2%のインフレ目標に近づいていくとの見方を示した。失業率は、2025年が4.4%(前回4.3%)とわずかに上昇するものの、その後は前回から変更はない。
パウエル議長は記者会見で、トランプ政権の政策の影響に関し、「不確実性が高い」と述べ、シグナルとノイズを分別しながら、通商、移民、財政、規制緩和の4つの政策の正味の効果を慎重に見極めていく姿勢を示した。質疑では、このところ消費者や企業マインドが悪化しており、将来的に消費などが減退する可能性があるのではないかとして、マーケットでくすぶっている米国経済への懐疑的な見方に関する見解をただす質問が出た。これに対し、パウエル議長は、ダウンサイドリスクとなることは認めつつ(1)消費は減速しつつも堅調なことや、失業率が4.1%にとどまるなど経済指標は必ずしも悪化していないこと、(2)聞き取り調査のデータと実際の経済データの間に必ずしも強い相関が見られてこなかったことなどを挙げ、経済は依然として良い位置にあるとの認識を示した。また、景気後退の可能性については、4分の1程度と述べ、現時点ではさほど高くないと答えた。
(加藤翔一)
(米国)
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