西オーストラリア州議会選で与党・労働党勝利、新内閣発足
(オーストラリア)
シドニー発
2025年03月26日
オーストラリア・西オーストラリア州の州議会選挙が3月8日に行われ、ロジャー・クック州首相率いる現与党の労働党(ALP)が勝利し(注)、政権を維持した。労働党は2017年と2021年の州議会選に続いて、3回連続の勝利となった。この結果を受けて、クック州首相は3月18日に新内閣を発表した。
今回の選挙では、医療や地域サービスの充実、教育費の軽減、犯罪対策などに加え、生活費高騰対策、住宅供給不足と価格高騰による住宅問題の対策に対する有権者の関心が特に高かった。労働党は生活費高騰対策として、家計の学費支援や公共交通運賃の引き下げなどを打ち出し、住宅対策として賃貸住宅建設(Build-to-rent)プロジェクト支援策などを発表していた。
エネルギー関係では、労働党は2030年までに石炭火力発電を段階的に廃止し、必要に応じてガス火力発電も活用しつつ、風力発電や蓄電池の導入、送電網の拡張を支援するとしている。重要鉱物、グリーン鉄鋼、水素、二酸化炭素(CO2)の回収・貯留(CCS)プロジェクトに対しては、引き続き「投資誘致基金」を通じて支援していくとしている。また、州経済の多様化も掲げており、観光産業やバイオメディカル産業、宇宙産業などの育成も挙げている。製造業では、州内で蓄電池、風力タービン、鉄道、バスなどの製造を目指す「メード・イン・西オーストラリア州(Made in WA)」計画も発表していた。防衛関係では、オーストラリアと米国、英国の安全保障協力に関する枠組み「AUKUS(オーカス)」の拠点の州内設立などに向けて、連邦政府と協力して取り組むとした。この拠点では原子力潜水艦の整備や軍艦の造船を行う計画だ。
同州の新内閣では、クック州首相が新たに経済多様化担当相を兼任することとなった。気候変動対策の担当は、(1)エネルギー・脱炭素化・製造業・技能・TAFE(高等職業訓練専門学校)担当相と、(2)先住民関係・水・気候耐性・南西地域担当相に分割され、(1)には前保健相のアンバー・ジェード・サンダーソン氏がピルバラ地域担当相と兼任するかたちで就任し、(2)には前地域開発相のドン・パンチ氏が就任した。
(注)公共放送ABC(3月8日付電子版)は、下院59議席中、過半数の30議席を獲得したことで、労働党の勝利が確定したと報じていた。3月20日午後8時時点で、開票はなお続いている(開票率80.8%)。暫定結果では、労働党は上下両院の全96議席中60議席を獲得したものの、議席を14減らした。野党の自由党は6議席増やして16議席となった。国民党は2議席増の8議席、グリーンズが3議席増の4議席となった。
(青島春枝)
(オーストラリア)
ビジネス短信 e3df8aa85d99c237