TSMC、米国への1,000億ドル追加投資は台湾への投資に影響せずと説明

(台湾、米国)

調査部中国北アジア課

2025年03月17日

半導体ファウンドリー(受託製造)世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)の魏哲家(C.C.ウェイ)董事長は3月6日、台湾総統府で頼清徳総統と記者会見を開き外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、3月3日に米国のドナルド・トランプ大統領と発表したアリゾナ州での半導体製造事業に関する1,000億ドルの追加投資について(2025年3月4日記事参照)、詳細を説明した。

魏董事長は米国への投資について、「最も大きな理由は顧客の要求だ。日本、ドイツ、米国のいずれに建設する生産ラインも同様だ。米国の顧客の需要が非常に高まっており、多くの分析を重ねた結果、現在の米国の投資計画では不足と判断した」と述べた。

TSMCは1,000億ドルの追加投資により、先進パッケージング工場を2カ所と、研究開発拠点を建設する予定だが、研究開発拠点の設立について、台湾内では先端技術が米国に流出することを懸念する声も出ている。これについて、魏董事長は「TSMCの生産ラインの特徴は、生産を開始してからも改善、製品の改良を重ねることにある。一方で、2ナノから1.6、1.4、1.2ナノといった技術的な革新を伴う研究開発は、現在1万人の技術者が台湾の研究開発センターで取り組んでおり、今後も台湾で行う。米国の研究開発センターは技術者1,000人規模で、現状の製品の改良をベースにした開発を行うものだ」と説明した。また「台湾では2025年に11の生産ラインを建設予定で、米国への追加投資による台湾への投資に影響はない」と強調した。

TSMCの2024年第4四半期(10~12月)決算によると、同年の国・地域別の純収益は、北米70%、中国大陸11%、アジア大洋州10%、日本5%、欧州・中東・アフリカが計4%だった。また、同年の設備投資支出は290億7,600万ドルだった。

台湾の調査会社トレンドフォースは「TSMCが巨額の投資資金をどのように捻出するのかは課題」と分析した。「工商時報」は「1,000億ドルの投資をトランプ大統領の任期中に終える場合、1年当たりの支出額は250億ドルとなり、TSMCの年間設備投資支出の過半を占める」と指摘している(「工商時報」3月4日)

(江田真由美)

(台湾、米国)

ビジネス短信 df627df2128f69d9