国際組織の金融活動作業部会、ラオスを強化モニタリング対象国・地域に指定

(ラオス)

ビエンチャン発

2025年03月03日

フランスの首都パリに本部を置き、マネーロンダリング(資金洗浄)対策やテロ資金供与を監視する国際組織の金融活動作業部会(FATF、注1)は2月17~21日に開催した本会議で、ラオスとネパールを新たに強化モニタリング対象国・地域(グレーリスト)に追加した(注2)。ラオスは今回で2度目のグレーリスト入りとなった。

今回の審査は2023年7月の相互評価報告書(MER)以後のラオスの進捗状況を評価したものだ。MERでは、FATFの40項目の勧告のうち9項目で「非準拠」、22項目で「一部準拠」と評価し、AML/CFT(アンチマネーロンダリング/テロ資金供与防止)レジームの改善を要求してきた。

現地報道によると、FATFは金融情報部門(FIU)のリソースの強化や無記名株式の廃止など、MERの提言措置について幾つかの前進は認めたが、カジノや銀行、経済特区に拠点を置く事業者に対する「リスクに応じた監督」の実施や、金融情報分析の質と量の強化、リスクプロファイルに沿った捜査や押収の実証などが不十分で、FATFと協力し強化しなければならないと指摘した。今回グレーリストに掲載されたことで、ラオスは国際金融機関からの監視の目が厳しくなり、国外からの投資や銀行取引に影響を与える可能性がある。政府はFATFと協力してこれらの懸念に対処し、AML/CFTの枠組みを強化しなければならない(2月26日付「ラオシャン・タイムズ」紙)。

この影響について、ジェトロがラオス金融機関の関係者にインタビューしたところ、日本貿易保険のカントリーリスク分類では既にラオスはHカテゴリーに分類されており、貿易や金融で特に影響はないとのことだ。一方で、融資資金調達では、リスクプレミアムを課され、資金調達コストが上昇する可能性を指摘する。さらに、国際間資金決済ではこれまで以上にKYC(注3)が課され、ユーザーや金融機関の業務時間やコスト負担が増す可能性もあるという。

ラオス政府は2007年にFATFのマネーロンダリングに関するアジア太平洋グループ(APG)に加盟し、2015年にFIUを強化するために、アンチマネーロンダリング・インテリジェンス・オフィス(AMLIO)を設立し、この問題に取り組んできた。2024年11月にはマネーロンダリング・テロ資金供与防止法(No.64/NA)を公布するなど、関連規則の整備を精力的に進めている。

(注1)FATFは1989年にG7が設立した政府間組織で、マネーロンダリング、テロ資金供与、大量破壊兵器の資金調達の撲滅に取り組んでいる国際組織。

(注2)2月21日時点のグレーリストは25対象国・地域で、ASEANではラオスのほかに、ベトナムが対象国となっている。一方で、フィリピンは改革が評価され、今回除外された。グレーリスト対象国・地域は金融システムで特定された欠陥を是正するまで、特別なモニタリングの対象となる。また、マネーロンダリング、テロ資金供与、大量破壊兵器に対抗するための深刻な戦略的欠陥を有する国または地域とされる行動要請の対象となるハイリスク国(ブラックリスト)は北朝鮮、イラン、ミャンマーの3カ国。

(注3)KYCとはKnow Your Customerの略で、金融機関や企業が顧客の身元を確認して取引を監視し、マネーロンダリングやテロ資金供与などの不正行為を防止するためのプロセス。

(山田健一郎)

(ラオス)

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