EU拠点のブリュッセルで「テック、デジタル&AIサミット」開催
(EU)
調査部欧州課
2025年03月03日
EUの機関が集まるベルギー・ブリュッセルで2月19日、「テック、デジタル&AIサミット(Tech, Degital and AI Summit)」が欧州議会の主催で開催された。4つのセッションと2つの個別インタビューで構成され、欧州議会から7人、欧州委員会から4人、欧州サイバーセキュリティー庁(ENISA)などの政府機関、マイクロソフトやメタなどの民間企業から合計18人のスピーカーでディスカッションが行われた。参加者は150人以上と報告されている。
デジタル時代の戦略的自律性を維持し、競争力を高め、市民の権利を守りつつ、技術的飛躍にどのように対処することができるかがテーマとなった。デジタルトランスフォーメーション(DX)や人工知能(AI)の推進から、データプライバシーやサイバーセキュリティーの保護まで、実現可能なアプローチに焦点を当てた。
4つのセッションでは、それぞれ次のテーマでディスカッションが行われた。
- 欧州の技術規制:施行とビジネスへの影響
- ミドルテクノロジーのわな(注)からの脱出:イノベーションを阻むEUの障壁
- 欧州をAI大陸に:サイバーセキュリティーの確保と戦略的パートナーシップによる協調的アプローチの促進
- AIイノベーションを促進するために、プライバシーと競争力のバランスを取る
スピーカーとして出席した欧州市民を代表する欧州議会議員や、EUの行政執行機関の欧州委員会の高官、政府機関や民間企業のメンバーがそれぞれのセッションで、全体共通のテーマ「規制がビジネスに与える影響や、イノベーションの妨げにならないか」に関して議論を行った。
多くの国とともに複数の民族が存在する欧州で、規制・ルールの必要性は認識しながらも、それがビジネスの発展や将来のイノベーションの妨げにならないようにしなければならないことが共通の合意だった。
また、欧州ではデジタル領域で幾つもの規制が既に存在しているため、これらをシンプルにして理解しやすいようにする重要性も、複数のスピーカーから意見が上がった。ある欧州議会議員が「規制順守は極めて重要だが、そのために100人の法律専門家を100人のエンジニアの代わりに雇わなければならないのは絶対に避けるべき」と発言し、会場を沸かせた。
来場者からは、デジタル・AI領域で米国や中国に後れを取ってはならないとの意見が多く出ていた。
サミット会場(主催者提供)
セッションの様子(主催者提供)
(注)過去長い期間、自動車産業など同じ企業による技術的支配が行われること、また、投資の影響もあり、高い水準での技術的イノベーションが起きていないことを示す。
(坂本裕司)
(EU)
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