ベトナム商工相が訪米、貿易不均衡是正のためエネルギーなど米国からの輸入を強化

(ベトナム、米国)

ハノイ発

2025年03月24日

ベトナムのグエン・ホン・ジエン商工相と国営エネルギー企業代表者らが、3月13~14日に米国を訪問した。液化天然ガス(LNG)やエネルギー技術輸入による、米国との貿易不均衡是正に自発的に取り組むことで、追加関税措置やそれに伴う対米輸出の減速を回避する動きとみられる。米国はベトナムにとって最大の輸出相手国だが、米国の2024年の対ベトナム貿易赤字額は1,235億ドルに達する。2023年比で18.1%増加し、赤字額は、国別では中国、メキシコに次いで大きい。

13日には、ジエン商工相は米国通商代表部(USTR)のジェミソン・グリア代表と会談した。ジエン商工相は「ベトナムは米国との互恵的な経済・貿易関係の構築を望んでおり、米国の労働者、経済や国家安全保障に害をおよぼす意図はない」と発言。両国の関係促進にあたり、ベトナムの市場経済国認定を求めた(注)。グリア代表は「貿易においては双方が経済的利益を得る必要がある。ベトナムは貿易収支を改善するため、より強力な解決策を持つ必要がある」と発言。会談の最後では、両国は、調和のとれた持続可能で安定した経済・貿易関係を構築するため、事務レベルの協議を定期的に行っていくことに合意した(ベトナム政府公式サイト3月14日)。

本会談について、米国からの発表はなく、米国から具体的な関税に関する要求などがあったかは報じられていない(3月18日時点)。

なお同日、ベトナム現地では、ファム・ミン・チン首相が、マーク・ナッパー駐ベトナム米国大使に対し、米国製品の輸入関税の見直しを進めており、特にLNG、農産品、ハイテク製品といった需要が高い米国製品の輸入を奨励すると発言している。

14日には、ベトナム商工省の発表によると、ベトナム国営エネルギー企業と米国エネルギー大手企業などとの間で、41億5,000万ドル相当の6つの覚書が締結された(添付資料表参照)。覚書を締結した企業間で、さらに360億ドル相当の取引合意、覚書が予定されているという。米国からの発表やコメントは出ていない(3月18日時点)。

また、これとは別に、航空機調達や航空サービスの輸入、石油・ガス・石油化学生成製品の取引で501億5,000万ドルの契約・合意が見込まれており、これらをすべて合わせると、約903億ドルに達するとしている。

航空機については、3月1日にハノイ市で行われた米国企業とチン首相の対話会で、国営のベトナム航空が50機(110億ドル相当)、民営LCC最大手ベトジェット航空が200機をボーイングから購入する意向を示した。ベトナム政府もベトナム航空を財政支援し、購入を後押しする方針だ。

在ベトナム米国商工会議所の調査では、米国企業も関税政策の影響を懸念している。ただし、3月17日の週に、アップル、ボーイング、アマゾンを含む米国企業団がベトナム訪問を予定している点は、両国関係にとって明るい兆候との報道もある(ロイター通信3月14日)。

(注)ベトナムはこれまでも米国に市場経済国の認定を要望しているが、米国は直近で2024年8月に認定を見送る判断をしている(2024年8月5日記事参照)。

(萩原遼太朗)

(ベトナム、米国)

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