232条追加関税、メキシコ製自動車や自動車部品を一部除外するUSMCAサイドレターが有効との見方も
(メキシコ、米国)
調査部
2025年03月27日
トランプ大統領が3月26日に発表した1962年通商拡大法232条(以降、232条)に基づく自動車・自動車部品への追加関税措置(2025年3月27日記事参照)について、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)のサイドレターの内容が今でも有効であり、メキシコ製については、一定水準までは追加関税が課されないと解釈する識者がいる。ジェトロが2018年当時のメキシコのUSMCA交渉官に確認したところ、サイドレターに有効期限はなく、追加関税の根拠法規が232条であれば、引き続き有効と考えられるとのことだった。
当時の米国通商代表部(USTR)のロバート・ライトハイザー代表が署名したサイドレターは、両国が合意した内容として、次のとおり規定している。
- 米国政府は232条追加関税の発動後、少なくとも60日間はメキシコ製品を対象としない。
- 60日経過後は、メキシコから輸入される年間260万台の乗用車〔スポーツ用多目的車(SUV)を含む〕、ライトトラック(数量制限なし)、年間1,080億ドルまでの自動車部品輸入については、追加関税から除外する。
- USMCA非原産品に対する関税は、2018年8月1日時点の米国の最恵国待遇(MFN)関税率を超えないものとする。
- 乗用車と部品の数量枠についてはメキシコ側が管理し、生産者との協議の下で割当を行う。
1.が有効な場合、今回の追加関税発動(完成車は4月3日を予定)から60日間は追加関税が課されない。2.および3.が有効と考えられる場合、メキシコ製の乗用車は年間260万台まで、ピックアップトラックは数量制限なし、自動車部品は年間1,080億ドルまで追加関税を回避できることになる。
2024年の対米乗用車・SUV輸出台数は213万台
米国国際貿易委員会(USITC)のデータベースによると、2024年の米国のメキシコ製自動車(大型車両を除く)の輸入台数は約288万台、ピックアップトラックを除く乗用車(SUVを含む)は約213万台だ。また、同年のメキシコ製自動車部品(注)の輸入額は668億4,985万ドルであり、現時点では乗用車、自動車部品ともサイドレターの除外枠内(260万台、1,080億ドル)にとどまる。しかし、第1次トランプ政権が約束した内容とはいえ、2018年時点の約束を守るかどうかは不透明で、無視する可能性もある。
メキシコ政府は、USMCA原産品に対する対メキシコ追加関税の免除で3月6日に米国と合意に達した後、少なくとも4月2日までは対米報復関税を導入しないと公言している。しかし、3月12日に鉄鋼・アルミニウム製品に対する232条の追加関税がメキシコ製品にも課され、4月3日以降は自動車についても追加関税が課される予定だ。国内からは鉄鋼業界を中心に対米報復関税を要求する声が強まっており(「レフォルマ」紙3月21日)、4月2日に予定される米国の相互関税の内容次第では、メキシコ政府も報復措置を導入せざるを得ない状況に陥る。第1次トランプ政権がサイドレターで約束した内容などを材料とし、4月2日までの米国との交渉を有利に進めることがメキシコ政府に求められている。
(注)北米産業分類システム(NAICS)のコード3363で抽出。
(中畑貴雄)
(メキシコ、米国)
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