2024年の世界のエネルギー需要は2.2%増、異常気温で電力需要が増加

(世界)

調査部国際経済課

2025年03月26日

国際エネルギー機関(IEA)は3月24日、「グローバル・エナジー・レビュー」(2025年版)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。2024年の世界のエネルギー需要は前年比2.2%増〔648エクサジュール(EJ)(注1)〕で、2013年から2023年までの年平均伸び率1.3%を大幅に上回った。

2024年のエネルギー需要増加分の8割超は、新興国・地域によるものだった。主要国・地域のエネルギー需要の伸び率をみると、インドが4.9%増、東南アジアが4.2%増、中国が2.9%増と続く。中国のエネルギー需要量は174EJと、世界の26.9%を占め最大だったが、伸び率は前年(5.7%)を大幅に下回った。先進国・地域におけるエネルギー需要は、数年にわたり減少が続いていたが、2024年には約1%の増加に転じた。米国では1.7%増と前年の1.4%減から増加、EUでも0.5%増と前年の4.5%減から増加に転じ、2017年以来の需要増(注2)となった。

分野別にみると、2024年のエネルギー需要を牽引したのは電力部門だった。同年の世界の電力消費量は前年比4.3%増となり、2010年から2023年までの年平均成長率(2.7%増)を上回った。過去最高を更新した世界気温の上昇に伴い、厳しい熱波が襲った中国、インドをはじめとする多くの国・地域で冷房需要が急増したことが主な要因となった(注3)。また、産業部門によるエネルギー消費量の増加、輸送手段の電化、データセンターや人工知能(AI)などデジタル部門の拡大が起因した。供給面をみると、発電量も需要増を反映して4.2%増加した。電源別の発電割合では、石炭34.5%、再生可能エネルギー(再エネ)32.1%、天然ガス21.8%、原子力9.1%、石油が2.4%で、化石燃料由来の電源が全体の約6割を占めた。他方、2024年の発電量の増加分(1,256テラワット時)に限ると、再エネと原子力を合わせて8割を超えた。

世界のエネルギー関連の二酸化炭素(CO2)排出量は前年比0.8%増の378億トンとなった。新興国・地域による排出量は1.5%増と世界平均より伸びが高く、経済成長および人口増加の加速によるエネルギー需要の増加が起因した。中国の排出量は0.4%増で前年(4.5%増)から鈍化したが、1人当たりのCO2排出量は先進国・地域より16%多く、世界平均の2倍に当たる。他方、先進国・地域のCO2排出量は1.1%減の109億トンとなり、50年前の水準まで減少した。

ただし、CO2排出量の増加率は、世界のGDPの成長率(3.2%増)を大幅に下回った。IEAのファティ・ビロル事務局長は「太陽光、風力、原子力、電気自動車の力強い拡大により、経済成長とCO2排出量の関連性は弱まっている」と評した。

(注1)J(ジュール)はエネルギーの大きさを示す単位。1EJ(エクサジュール)は10の18乗J。

(注2)2021年の新型コロナウイルスからによる反動増を除く。

(注3)国連プレスリリース(2025年1月21日付)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

(田中麻理)

(世界)

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