米下院、通年つなぎ予算法案を可決も、政府閉鎖の回避は微妙な状況
(米国)
ニューヨーク発
2025年03月13日
米国連邦議会下院は3月11日、期限が3月14日に迫っているつなぎ予算(2024年12月23日記事参照)について、2025会計年度(2024年10月~2025年9月)を通じ政府閉鎖を回避するためのつなぎ予算法案を、賛成217、反対213で可決した。これまでのつなぎ予算とは異なり、ほぼ共和党議員の票のみで可決した。民主党から1人が賛成し、共和党から1人が反対に回った。
今回下院で可決された通年つなぎ予算法案は、従来と同様に、基本的には2024会計年度の歳出水準を維持するものだが、非国防予算を約130億ドル削減する一方で、国防予算は約60億ドル増額する。非国防予算の中には、歳出がゼロとなるプログラムも多数存在するもようだ(政治専門紙「ポリティコ」3月8日)。
また、米国主要メディアによると、通常の歳出法案とは異なり、「イヤーマーク」と呼ばれる個別プロジェクトと予算とのひもづけがないことも特徴だ。このため、予算の具体的な配分については行政府の裁量が大きくなるとみられている。この点について、下院共和党の財政保守派(フリーダムコーカス)は、6カ月間のつなぎ予算により「トランプ政権が(予算の)無駄、不正、乱用を発見し、排除するための行政府による重要な仕事を継続できるようになる」と歓迎する声明を発表した。一方、民主党は、下院歳出委員会のロサ・デラウロ少数党筆頭理事(コネティカット州)がファクトシートを発表し、通年つなぎ予算法案は「イーロン・マスク氏とドナルド・トランプ大統領が米国の家庭や企業から資金を盗むことを加速させる」と激しく非難している。
通年つなぎ予算法案は今後、上院に送付されて採決されることになるが、フィリバスター(議事妨害)を抑えて可決するためには60票が必要となる。上院における共和党の議席数は53議席で、共和党議員全員が賛成に回った場合でも、民主党の賛成を少なくとも7票得なければ可決することができない。イヤーマークをはじめ、通年つなぎ予算法案には与野党間で複数の対立点が存在しており、民主党は、30日間のつなぎ予算など異なるアプローチでの政府閉鎖回避を模索しているもようだ。今後、通年つなぎ予算法案が成立するのか、あるいは異なるかたちで政府閉鎖を回避できるのか微妙な情勢だ。
なお、財政責任法の下では、4月30日時点でつなぎ予算から支出する場合、前年度予算から強制的に1%の歳出削減を実施することが義務付けられているが、共和党とトランプ政権は、今回の通年つなぎ予算法案を通常の歳出法案と同等のものと見なすことにより、この規定を回避したいもようだ。仮に通年つなぎ予算法案が成立し、共和党の関心の高い国防費の削減を回避できれば、予算決議(2025年2月27日記事参照)や減税・歳出削減をめぐる調整に十分な時間をかけられるため、この観点からも今回のつなぎ予算法案の成否は注目だ。
(加藤翔一)
(米国)
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