米道路安全保険協会、各社の自動緊急ブレーキ性能向上と発表
(米国)
ニューヨーク発
2025年03月03日
米国道路安全保険協会(IIHS)は2月12日、多くの自動車メーカーの車両に搭載される自動緊急ブレーキ(AEB)の性能が向上したという実験結果を発表した。
AEBは、カメラやレーダーなどを利用して車が衝突しそうになったことを検知し、自動的にブレーキをかけるシステムだ。今回IIHSは、実験車両の前方に乗用車、二輪車、トレーラーを障害物として配置し、時速31マイル(約50キロ)、37マイル(約60キロ)、43マイル(約69キロ)で走行する実験車両に搭載されたAEBが適切に警告を発し、衝突を回避するかを判定した。その結果、30車中22車が衝突を回避できたことから、「良好」あるいは「許容範囲」と評価し、2023年の実験結果の3車(スバル「フォレスター」、ホンダ「CR-V」、トヨタ「RAV4」)を大幅に上回った。
AEBに関しては、バイデン前政権下の運輸省交通安全局(NHTSA)が2024年5月9日、米国で販売されるほぼ全ての乗用車とトラックに、歩行者との衝突を避ける歩行者用自動緊急ブレーキ(PAEB)や、前方を走る車両との距離や速度を検知して衝突の危険性を知らせる前方衝突警告(FCW)システムとともに、設置を義務付ける最終規則を発表している。これによって年間に少なくとも360人の命が救われ、2万4,000人の負傷が防げると試算した。米国の交通事故死者数は、2024年1~9月期で前年同期比4.4%減の2万9,135人と3年連続で減少したが、交通量に占める割合(注)は、新型コロナウイルスのパンデミック前の水準を依然上回っている。
また、最終規則では、時速62マイル(約100キロ)まで加速した後に前方の車両との接触を回避できることや、システムが昼間と夜間の両方で歩行者を検知できることなどを求めている。これに対し、ゼネラルモーターズ(GM)やトヨタ自動車などが加盟する業界団体の自動車イノベーション協会(AAI)は「現在の技術では実現不可能」で、「この要件が、安全でなく、意図しない結果につながる可能性がある」として、NHTSAに内容の再検討を求める請願書を提出していた。これを受けてNHTSAは、最終規則の発効を2024年7月8日から2025年1月27日に延期、トランプ政権下ではさらに3月20日まで延期し、内容も再検討することとなった。
(注)全国の約5,000カ所で定点的に収集される交通量データに基づく死亡事故件数の割合。
(大原典子)
(米国)
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