カナダ政府、官民共同による高速鉄道の開発事業を発表
(カナダ)
トロント発
2025年02月28日
カナダ政府は2月19日、オンタリオ州トロント市とケベック州ケベックシティ間に新たな高速鉄道を開発する共同事業を発表した。今後6年間で39億カナダ・ドル(約4,056億円、Cドル、1Cドル=約104円)を投じ、全長約1,000キロ、最高速度毎時300キロで走行する完全電化路線による高速鉄道網をつくるとしている。同鉄道は、炭素排出量の削減と気候変動目標に貢献するとともに、2大都市であるトロント市とモントリオール市間の鉄道移動にかかる時間をこれまでの半分の約3時間に短縮する予定だ。
ジャスティン・トルドー首相はこのプロジェクトに関し、「最も人口の多い2つの州とその都市間の結びつきを強化し、企業のコストを削減しながら、生産性と競争力を向上させるだろう」と述べた。この開発により経済が刺激され、GDPを年間最大で350億Cドル押し上げるとともに、建設によって5万1,000人以上の雇用創出を見込んでいる。
また、民間の共同開発パートナーには、提案依頼書(RFP)を入札した3つのコンソーシアムの中から、カデンス(Cadence)が採択されたことも発表された。カデンスは、ケベック州年金基金のインフラ部門であるCDPQインフラや、建設会社のアトキンスレアリス(旧SNCラバラン)、航空企業のエア・カナダ、フランスの交通会社のケオリス、シストラ、および欧州で高速鉄道サービスを提供するフランスの大手プロバイダーのSNCFボヤジャーで構成されるコンソーシアムで、沿線コミュニティとの協議を含む設計と構築のみならず、資金調達や運営、保守も担当する。さらには、共同開発事業を監督するため国営組織アルトが新設され、サービス基準や価格、運用要件を管理する。アニータ・アナンド運輸相は、アルトとカデンスは、今後数週間以内に正式に契約を締結し、線路の敷設場所や駅舎の建設場所など、第1段階の設計作業の概要を明確にする予定と説明した。
カナダ政府は、事業全体の推定費用やスケジュールに関しては「価格を決定する前にさらなる調査が必要」として言及していない。アルトのマーティン・インブロー社長兼最高経営責任者(CEO)は、建設開始以降の問題発生を回避するためには4、5年ほどの長いリードタイムが必要とした。また、全体の事業の概算費用について、「グローブ・アンド・メール」紙のインタビューで「暫定で600億~900億Cドルと想定しているが、こうした費用の一部は外部の投資家によって賄われる可能性がある」と述べている。
(井口まゆ子)
(カナダ)
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