1月の米ISM景況感指数、製造業に回復の兆し、幅広い業種で関税政策の影響懸念

(米国)

ニューヨーク発

2025年02月06日

米国サプライマネジメント協会(ISM)は2月3日に1月の製造業景況感指数を、5日にサービス業(非製造業)景況感指数をそれぞれ発表した。製造業に回復の兆しが見られる一方、製造業・非製造業を問わず、トランプ政権による今後の関税政策の影響に懸念を示す声が多く聞かれた。

製造業景況感指数外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは50.9で、前月から1.7ポイント上昇し、基準値の50を10カ月ぶりに上回り、ブルームバーグの市場予想(49.3)も上回った。

項目別では、指数の構成要素のうち、新規受注(55.1)が好調を維持し、3カ月連続で基準値の50を上回った。また、受注の増加を受けて、生産(52.5)、雇用(50.3)ともに、8カ月ぶりに50を上回った。供給(50.9、注1)はこれらの増加に十分に追い付いていないもようで、短期的には企業が生産能力を拡大させる可能性もありそうだ。業種別では、拡大と回答した業種は全体で8業種、産出額の大きい6業種(注2)では4業種となった(注3)。

ISM製造業調査委員会のティモシー・フィオレ会長は結果について、「需要は明らかに改善している。生産や雇用も増加しており、企業が成長計画を進めていることが示されている」と肯定的なコメントを発している。企業のコメントでは、「2025年の最初の2週間の需要は、この時期の通常レベルを上回っている」(一般機械)、「顧客からの注文は予想よりもやや強かった」(化学)など、複数の業種から受注の好調さを指摘する声が聞かれた。なお、トランプ政権による関税政策の影響を注視していくとコメントした業種も複数見られた。

一方、非製造業景況感指数外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは52.8と、基準値の50を上回ったものの、前月から1.2ポイント減少し、市場予想の54.2も下回った。

項目別では、ビジネス活動(54.5)、新規受注(51.3)がそれぞれ前月より3ポイント程度減少した。一方、雇用(52.3)、供給スピード(53.0)は上昇したが、それぞれ1、0.5ポイントの上昇にとどまった。業種別では、全18業種のうち14業種が拡大、3業種が縮小と回答した(注4)。

ISMサービス業調査委員会のスティーブ・ミラー会長は、今回の結果について「ビジネス活動と新規受注の成長が鈍化したため、全体の指数も低下した。多くの回答者は悪天候が活動レベルや生産に影響を及ぼしたと指摘している」とコメントした。企業のコメントはまちまちで、エネルギー関連プロジェクトの増加に伴う好調さを指摘する声もある一方、予想よりも業績が下回っているとする声もあった。また、製造業と同様にサービス業でも、多くの業種から関税政策などによる今後のコスト増を懸念する声が寄せられている。

(注1)50を上回ると供給スピードの遅延、50を下回ると改善を示す。供給スピードの遅延は商品の動きの多さを示すので、指数として景況の良さを表す。

(注2)商務省発表の2023年第4四半期(10~12月)から2024年第3四半期(7~9月)までのGDP数値に基づき、産出額の大きい6セクターの化学、輸送機器、コンピュータ・電子機器、食品・飲料・たばこ、一般機械、石油・石炭製品を指す。

(注3)拡大したと回答した業種は、繊維、一次金属、石油・石炭製品、化学、一般機械、輸送機器、プラスチック・ゴム、電気機器。縮小したと回答した業種は、非金属鉱物、その他製造業、木材、金属加工、家具、コンピュータ・電子製品、紙、食品・飲料・たばこ。

(注4)拡大したと回答した業種は、農林水産業、宿泊・飲食サービス、鉱業、卸売り、金融・保険、ヘルスケア・社会扶助、教育サービス、運輸・倉庫、小売り、情報、建設、経営サポートサービス、行政、公共事業。縮小したと回答した業種は、その他サービス、不動産、専門職・科学・技術サービス。

(加藤翔一)

(米国)

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