年金制度改革法案が可決、雇用主負担増で年金受給額を増強

(チリ)

サンティアゴ発

2025年02月10日

チリ国会は1月29日、年金制度改革法案を可決した。これはガブリエル・ボリッチ大統領が掲げた政策の1つで、現行の年金制度を見直し、雇用主負担を増加させることで加入者の年金受給額を増やすことを目的としている。雇用主負担は、法律の施行後、9年間(11年間まで延長される可能性あり)にわたって段階的に引き上げられる。

政府の発表によると、この改革により加入者の年金受給額が14~35%の間で増額することになり、280万人が恩恵を受けるとしている。

現行の年金制度は、民間企業が主体となって運営する確定拠出型年金(AFP)制度がベースとなっており、そこに2022年から始まったユニバーサル保証年金(PGU)と呼ばれる公的支援によって、年金の受給権を持たない、または受給額が少ない人への支援がなされてきた(2022年2月4日記事参照)。一方で、十分な金額がもらえないために生活難を訴える国民が多く、長く社会問題化していた年金制度を改善するために、ボリッチ政権が法案を進めたという経緯がある。

大きな変更点は、雇用主負担で新たに課税所得の7%を拠出することだ。これまで、労働者本人が課税所得の10%に年金運用会社へのコミッションを加えた額を納め、雇用主は傷害保険(SIS)の1.5%を負担することとなっていた。

新たな年金制度では、雇用主はSISを含め8.5%を拠出することとなり、そのうちの4.5%は、将来の年金を強化することを目的として個人の資本増強に割り当てられる。残りの4%は創設予定の社会保障基金によって管理され、うち2.5%はSISと男女格差の是正に、残りの1.5%は一定期間の年金を収めた人の給付を増額することに充てられる。

ほかにも、今回の改革では、PGUを現行の月額22万4,004ペソから25万ペソ(約4万円、1ペソ=約0.16円)まで増額することや、AFPの競争力拡大を促すことを目的として、2年ごとに加入者全体の10%を最も手数料の安いAFPに変更させること(加入者は変更の拒否も可能)なども含まれている。

(岡戸美澪)

(チリ)

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