ユニバーサル保証年金法案が可決、対GDP比0.98%の財源確保の方策も発表

(チリ)

サンティアゴ発

2022年02月04日

チリのユニバーサル保証年金(PGU)法案が1月26日に議会で可決された。同法案は、現行の年金制度を改善すべく政府が提出していた。チリの年金制度は、民間企業が主体となって運営する確定拠出型年金(AFP)制度がベースとなっているが、政府は以前から、基本連帯年金(PBSV、注1)や連帯年金拠出金(APSV、注2)などを通じて、低所得者への公的支援を実施してきた経緯がある。PGUは、それらに取って代わる新たな公的支援の枠組みで、支援対象の拡大と支給額の増加を目的としている。

受給対象は、人口の上位10%の富裕層を除く65歳以上の国民約250万人とされている。受給額は月額最高18万5,000ペソ(約2万5,900円、1ペソ=約0.14円)で、AFPの受給額が63万ペソ以下の場合は満額が支給され、63万ペソ超100万ペソ未満の場合は減額調整、100万ペソ超の場合は受給対象外となる。政府によると、これまで金額制限などによってPBSVやAPSVを受給できなかった約60万人が、PGUでは新たに受給対象者となる。加えて、PBSV、APSVと比較した際に、最低でも5.1%の受給額増が実現される(中には30%超の受給額増となるケースもある)。

同法案の審議では、財源をいかにして確保するかというテーマに注目が集まり、大きな争点となった。法案可決後の財務省の発表によると、PGUの運用コストは、対GDP比で0.98%と見積もられており、主に付加価値税(VAT)の徴税範囲の拡大や、キャピタルゲインへの課税、生命保険への相続税課税や贅沢税の導入、鉱業分野における探鉱権料税、採掘権料の引き上げなどの手段によって賄われる。

セバスティアン・ピニェラ大統領は「PGUは、現在の年金受給者だけでなく、将来退職する全ての人々の年金受給状況を改善するもので、間違いなく国民の老後の安心と安全を向上させる」とコメント。ロドリゴ・セルダ財務相は、過去40年の中で最も重要な改革だと述べ、国会での合意を称賛した。

(注1)年金の受給権を持たない65歳以上向けの公的支援。支給額は月額最高17万6,096ペソ(毎年改定)。

(注2)年金受給額が月額52万366ペソ(毎年改定)未満の65歳以上向けの公的支援。

(岡戸美澪)

(チリ)

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