世界銀行がタイ経済モニターを公表、中小企業などの生産性向上が必要
(タイ)
バンコク発
2025年02月27日
世界銀行は2月14日に「タイ経済モニター(2025年2月)」を発表し、タイの2024年と2025年のGDP成長率がそれぞれ2.6%、2.9%になると予測した。なお、2月17日にタイ政府が公表した2024年のGDP成長率は2.5%(2025年2月19日記事参照)。
同レポートでは、2025年のタイ経済は強い内需と財政刺激策に牽引されて勢いを増し、2.9%の成長率に加速すると見込む。観光業と民間消費は、ペースは落ちるものの引き続きタイ経済の主要な原動力となる。観光客数は2025年半ばにはパンデミック以前の水準に戻ると予測し、年間では4,000万人に達するとしている。民間消費は財政刺激策、特にデジタル・ウォレット政策の現金給付プログラムにより、2024年のGDP成長率を0.3%ポイント上昇させたと推計している。ただし、GDPの0.8%にあたる1,450億バーツ(約6,525億円、1バーツ=約4.5円)の財政負担がある。他方、財輸出については、米国や中国などの主要市場の成長が鈍化しているため、世界的なエレクトロニクス産業の成長にもかかわらず、やや緩やかになると予想している。
また、同レポートでは、長期的な成長の促進のためには競争力を向上させる構造改革が必要と指摘。早急な政策改革が実施されなければ、タイの潜在成長率は2011~2021年の平均3.2%から2022~2030年には2.7%に低下し、高所得国入りを阻害する要因となると予測した。
なお、タイの中小企業は、企業の99.5%、雇用の69.5%、GDP全体の35.3%を占めており、タイの経済成長を再び活性化させるための大きな資産になり得るとする一方、(1)資金調達へのアクセスが限定的であること、(2)初期段階のインフラ(インキュベーターやアクセラレーター)への支援が不足していること、(3)将来のためのスキルが不十分であること、(4)特に公正な競争や貿易・投資に関連する規制上の障壁がある、という4つの課題に直面していると分析し、このような制約がとりわけ生産性向上とイノベーションに不可欠なデジタル分野に参入しようとする起業家が相対的に少ないことの一因だと指摘している。
(藤田豊)
(タイ)
ビジネス短信 6a0aeec1fae67f51