米議会上院、ラトニック氏の商務長官就任を承認、関税政策実行へ
(米国)
ニューヨーク発
2025年02月20日
米国連邦議会上院は2月18日、ハワード・ラトニック氏を商務長官に承認した。賛成51票、反対45票、棄権4票だった。賛成したのは全て共和党議員で、反対は民主党議員と同党と投票行動をともにする無所属議員だった。ドナルド・トランプ大統領はラトニック氏を指名する際、米国通商代表部(USTR)に対して直接的な責任を持ち、関税と通商政策を主導すると述べていた(2024年11月20日記事参照)。
ラトニック氏は金融業出身で、ニューヨークで行われるイベントでトランプ氏と頻繁に顔を合わせるうちに親しくなり、付き合いは数十年に上るという。強引な値引き交渉を行うなど、厳しい交渉人だといわれている。また、ラトニック氏はトランプ氏が提唱する関税政策を強く支持している。
トランプ氏は、これまでに発表した関税政策で、商務長官に対し複数の調査指令などを出している。就任初日の1月20日に発表した「米国第一の通商政策」では、貿易赤字是正のため、グローバルな追加関税など適切な措置の勧告や、中国との恒久的正常貿易関係(PNTR)の評価、1962年通商拡大法232条(注1)に基づく調査を開始する必要がある産業の特定、輸出管理システムの見直しなどを指示した(2025年1月22日記事参照)。相互関税については、商務長官に対して、USTR代表とともに米国の全貿易相手国との「非相互的な貿易関係」や米国が被る損害状況を調査し、救済措置の提言を含む報告書を大統領に提出するよう指示した(2025年2月14日記事参照)。これらにより、トランプ政権下では、関税政策で商務長官が果たす役割がこれまでより大きくなるとみられている(注2)。
なお、民主党議員は指名承認問題で、ラトニック氏の政策方針が関税に大きく依存しており、米国の物価上昇につながるとして反対した。他方、ラトニック氏はバイデン前政権下で成立したCHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)に対しては好意的だという(政治専門紙「ポリティコ」2月18日)。同法も商務省が管轄しており、政権交代直前まで助成案件(2025年1月27日記事参照)や助成確定(2025年1月20日記事参照)の発表が相次いでいた。ただし、トランプ政権になってからは、発表されていない。
(注1)232条は、ある製品の輸入が米国の安全保障を損なう恐れがあると商務省が判断した場合に、当該輸入を是正する措置を取る権限を大統領に与えている。現在、鉄鋼、アルミニウム製品に課されている追加関税も、この232条が基になっている(2025年2月17日記事参照)。
(注2)ただし、関税政策でトランプ氏の意向が最優先されるとの見方もある。
(赤平大寿)
(米国)
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