スイス産業界、トランプ米政権の関税引き上げ警戒
(スイス、米国)
ジュネーブ発
2025年02月14日
米国のトランプ新政権がカナダとメキシコ、中国に追加関税を課すことに対して、スイス産業界の警戒が強まっている。スイス機械・電気・金属産業連盟(SWISSMEM)のシュテファン・ブループバッハー会長は2月2日付のドイツ語系日刊紙「ブリック」のインタビューで、「(関税対象国以外でも)われわれに直接影響を与える。関税は不安を招き、世界経済にとって毒だ。特に米国では多くの物価が上昇し、米国経済が低迷すれば、スイスにも影響が出るだろう」と指摘した。
また、SWISSMEMのジャン=フィリップ・コール副会長はスイス公共放送協会・ドイツ語放送(SRF)による2月10日付インタビューで、「事態が拡大し、突然、より広範な製品グループが影響を受ける可能性がある」と強調し、米国よりむしろ最大の輸出先のEUからも追加関税措置を受ける可能性があることを懸念している。EUが過去に中国に対して最大25%の制裁関税を課した際、スイスもまたEU域外国としてその対象になった経験があるからだ。
スイス最大の銀行UBSは2月7日、「トランプ関税とスイス」と題するレポートを発表した。同レポートで「輸出に占める米国向けの割合が大きい産業は特に(米国による関税引き上げの)影響を受けやすい」と指摘する。スイスにとって米国は最大の輸出相手国で、2024年の速報値では、対米輸出は輸出全体の16.5%を占め、648億4,179万スイス・フラン(約10兆9,583億円、CHF、1CHF=約169円)に達した。中でも医薬品はスイスから米国への輸出のうちに占める割合が約半分(48.1%)を占め(添付資料図1参照)、スイス側は大幅な貿易黒字を計上している。レポートでは、スイスから全世界への医薬品輸出のうち、米国向けが占める割合が約3分の1であることから、関税の影響を受けやすく、スイスに大きな影響を与える可能性があるとしている(添付資料表参照)。
対米輸出依存度が高い品目として、医薬品以外に、医療機器、機械・電気・金属産業(MEM)製品、食品などが挙げられる(添付資料図2参照)。レポートでは、医療関係の精密機器で米国向けの輸出シェアが25%を占め、米国にも同業者が存在するため、関税引き上げの直接的な悪影響の可能性を指摘している。食品も輸出の3割が米国向けで、コーヒーを中心に、チョコレート、チーズが主に関税による価格上昇の直接影響を受けるとしている。ただし、食品輸出は対米輸出の3%しか占めていないため、全体的な影響の可能性は限定的だとも補足している。
また、UBSのレポートでは、トランプ政権の関税政策がスイス経済に悪影響を及ぼすシナリオとして、(1)米国におけるスイス製品の価格上昇による輸出競争力の低下、(2)スイス企業による特定の生産・研究開発拠点の米国への移転、(3)欧州の輸出産業とスイスのサプライヤーに対する間接的な影響、(4)世界、特に欧州の成長減速による間接的影響を挙げている。
その一方で、UBSレポートは、財の貿易だけでみればスイス側の大幅な黒字だが、サービス貿易はスイス側の赤字で、財・サービス貿易収支でみると、ほぼ均衡していることや、スイス企業の対米直接投資により米国で30万~40万人を雇用していることなどをファクトとして強調している。
(田中晋)
(スイス、米国)
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