トランプ新政権と停戦への動きに対しウクライナで懸念や期待
(ウクライナ、米国)
キーウ発
2025年02月21日
米国とロシアの代表団は2月18日、サウジアラビアの首都リヤドでウクライナ情勢に関する会談を行った(2025年2月20日記事参照)。これを受け、ウクライナの前経済相でキーウ経済スクール(KSE)のティモフィー・ミロワノフ理事長は19日、ポーランドの国際放送「TVPワールド」の番組に出演し、リヤドでの会談には具体的な結果はなく、今後の会談のための予備的な会談だったとし、「ウクライナは自分たち抜きで自国に関する交渉が行われていることに傷ついている」と述べた。
ミロワノフ理事長は18日、自身のSNSでトランプ大統領がウクライナ政府にこれまでの支援の見返りとして5,000億ドル相当の鉱物資源などを要求したと伝える英国メディアのテレグラフの記事を引用し、「これは植民地協定である」と批判し、ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領がこのような協定への署名を拒否するのは当然だと述べた。
在ウクライナ米国商工会議所(AmCham)は1月20日、ドナルド・トランプ新大統領の就任に祝意を示すとともに、新大統領と米国投資家の早期のウクライナへの訪問を期待する声明を発表した。また、AmChamのアンディ・ハンダー会長は同日、スイス・ダボスで「ユーロニュース」のインタビューに応じ、トランプ新政権のメンバーはビジネス界出身やビジネスを優先する政策を取る人が多いことを指摘し、「今年の停戦が予想される中、新政権と働けることを楽しみしている」と述べた。
AmChamと金融大手のシティ・ウクライナがAmCham会員に対して実施した「戦時下のウクライナでのビジネス環境」調査(2025年1月)によると、96%の回答企業が、戦争開始から約3年が経った今でもウクライナで事業を継続していると回答した。また、53%の企業が2025年の売り上げは2024年に比べて伸びると予想したほか、61%の企業が2025年中の停戦実現を予想するなど、米国を中心とした外資系企業の間ではウクライナ経済に対するポジティブな見方が広がっている。
米国国務省は1月26日、ドナルド・トランプ大統領の大統領令に基づき、米国の対外援助プログラムの実施を一時停止した(2025年1月28日記事参照)。ウクライナメディアによると、米国国際開発庁(USAID)によるウクライナでのすべてのプログラムへの資金供与が停止された。ウクライナメディア「エコノミチナ・プラウダ」(1月29日)によると、USAIDの支援を受けていたウクライナのメディアや非営利団体、政府機関などは数百にものぼるとしており、プログラム停止による影響は甚大とみられる。
(柴田哲男、坂口良平)
(ウクライナ、米国)
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