住宅用3Dプリンタで復興に取り組む
(ウクライナ)
キーウ発
2025年02月18日
住宅用3Dプリンタを製造するウクライナのスタートアップ3D UTUは2024年夏、キーウ近郊のイルピン市で、同国初の3Dプリンタによる住宅を建設した。既に同社の製品に対して国内外からの引き合いがあり、日本市場参入も狙う。同社社長のマックス・ザブドスキ氏に話を聞いた(2025年2月4日)。
世界銀行が2024年4月に発表した、ウクライナの復興需要の規模に関するレポート「Third Rapid Damage and Needs Assessment」によると、ウクライナ全土の住宅の10%以上が損壊し、約200万世帯が影響を受けている。巨額の住宅建設需要がある中で、いかに迅速に住宅を復旧するかが大きな課題だ。
同社がイルピン市に建設した3Dプリントの住宅は、ロシアによるミサイル攻撃によって破壊された住宅跡地に対する、100社ほどの民間企業の寄付によるチャリティープロジェクトによるものだ。この住宅には現在、ウクライナ人家族が居住している。
同社の3Dプリンタの最大の特徴は、運搬が容易なことで、20フィートコンテナで輸送可能だ。130平方メートルの一軒家の壁を72トンの素材から58時間(稼働時間)で作ることができる。床や内装などを含めておよそ2~3カ月以内で住居が完成するという。
イルピン市に建設された3Dプリンタ住宅外観(ジェトロ撮影)
イルピン市に建設された3Dプリンタ住宅(ジェトロ撮影)
3D UTUの3Dプリンタ(ジェトロ撮影)
3D UTUの住宅壁の素材はコンクリートで、ドイツの化学大手ヘンケルから調達する特殊材料を使用している。建設費は、通常の家に比べて50~60%程度に抑えることができ、1平方メートル当たり85ドル程度(壁部分のみの換算)という。ウクライナの人手不足や人件費高騰などの課題への解決策としても期待されている。
同社の3Dプリンタは、戦争被害がより大きい東部のハルキウやザポリッジャの被災者団体からも引き合いがあるという。また、米国やモンテネグロなど国外からも照会を受けている。住宅以外にも、飲食店のバーカウンターなど特殊な形状の構造物の製造実績もあるが、基本的には3Dプリンタ自体の販売に特化している。ザブドスキ氏は、将来的に日本市場にも3Dプリンタを販売して行きたいと意気込む。
(余田知弘、木場亮)
(ウクライナ)
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