米石油大手シェブロン、AIデータセンター向け電力供給に参入

(米国)

ニューヨーク発

2025年01月29日

米国の石油大手シェブロンは1月28日、投資会社エンジン・ナンバーワンと共同で、人工知能(AI)データセンター向けの電力供給事業に参入すると発表した。AIブームによる電力需要の急増を背景に、エネルギー業界各社が商機を探る中での参入となる。2024年12月には、米エクソンモービルも同様の事業参入を表明している。

エネルギー省ローレンス・バークレー国立研究所の調査は、データセンターの電力使用量が米国全体に占める割合が、2023年の4.4%から、2028年には最大12%まで増加すると見込んでいる。急増する需要に対応する必要性が高まる一方、小型モジュール炉(SMR)を含む原子力発電所の稼働には時間を要することから、データセンター向けのベースロード電源としてガス火力発電が注目されている。これを背景に、大手発電事業者による既存のガス火力発電事業者の買収も活発化しており、2025年1月には原子力発電所を多数保有するコンステレーションが、天然ガス発電大手カルパインを164億ドルで買収することで合意している。

今回のシェブロンによる発電事業への参入も、こうした動きと同様の方向性で、ガス火力発電施設を米国の南東部、中西部、西部地域に建設する計画だ。2027年末までに総発電容量4ギガワット(300万~350万世帯分)の供給を目指す。その際、二酸化炭素(CO2)排出量削減への世界的取り組みであるCO2の回収・有効利用・貯留(CCUS)も導入する考えだ。将来的には、さらなる発電容量の拡張も検討している。こうして発電された電力は、送電網を介さずデータセンターに直接供給する計画で、一般消費者向けの電力オークションを介さずに調達できることから、電気料金の値上げを回避することができる。

今回の発表にあたり、エンジン・ナンバーワンの創業者でもあるクリス・ジェームス最高投資責任者(CIO)は「エネルギーは米国のAI覇権の鍵である。米国の豊富な天然ガスを活用してデータセンターに直接電力を供給することで、AI分野での覇権を確保し、経済全体の生産性を向上させ、産業大国としての米国の地位を確かなものにすることできる」と述べている。また、シェブロンのマイク・ワース最高経営責任者(CEO)も「米国の豊富なエネルギー資源と無比の労働力により、新たな黄金時代を実現する」と述べている。トランプ政権は、エネルギー緊急事態を宣言し(2025年1月21日記事参照)、天然ガスの開発やガス火力発電所の新規設置の規制を緩和していく方向性を示しており(2025年1月22日記事参照)、これらの政策の後押しを受け今後も類似の動きが加速していくと期待される。

(藤田ゆり、加藤翔一)

(米国)

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