12月の米地区連銀報告、全体概況をわずかに上方修正も、関税・移民政策の影響を懸念

(米国)

ニューヨーク発

2025年01月16日

米国連邦準備制度理事会(FRB)は1月15日、2024年12月の地区連銀経済報告(ベージュブック)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。2024年11月23日~2025年1月6日までのデータに基づく。全体概況は、「11月下旬から12月にかけて経済活動はわずかから緩やかの間で増加した」とし、「わずかに増加」だった前回報告から上方修正となった。先行きは、「楽観的な見方が悲観的な見方を上回ったが、いくつかの地区の担当者は移民政策や関税政策の変更が経済に悪影響を及ぼす可能性がある、と懸念を示した」としている。

分野別では、消費は「わずかに増加し、ほとんどの地区で予想を上回る好調なホリデーシーズンの売り上げが報告された」として、前回から上方修正された。

住宅に関しては、「建設活動は全体的に減少した」としたほか、住宅販売についても「高い住宅ローン金利が引き続き需要を抑制しているため、全体として変化がなかった」とし、低調な状況の継続が示唆された。

製造業に関しては、活動がわずかに減少し、関税引き上げを見越して在庫を積み増していると報告した。

サービス部門では、金融サービスで「貸し付けがわずかに増加し、資産の質は全体的にほとんど変化がないが、貸付業者と地域団体が中小企業と低所得世帯の返済延滞について懸念を表明した」と報告した。非金融サービスに関しては、「わずかに増加で、娯楽・宿泊サービスと運輸、特に航空部門の成長が強調された。一方で、トラック輸送量は減少した」と報告した。

労働市場に関しては、「雇用者数は6地区でわずかに増加、6地区で変化なし」で、前回報告とほぼ同じ内容だった。部門別では、ヘルスケア部門で引き続き雇用が増加し、建設業でもわずかに増加したが、製造業では横ばいだったとし、おおむね雇用統計(2024年12月9日記事2025年1月14日記事参照)に近い内容となっている。そのほかでは、「解雇の報告は依然として少ない」「熟練労働者を見つけることが難しい」といった内容は前回とほぼ同様だったものの、(1)ほとんどの地区で賃金の伸びが緩やかに加速、(2)一部の地区では将来的な人材ニーズについて不透明感が増しているなど、労働市場の方向性が見えにくくなっているとする内容もあった。また、ドナルド・トランプ次期大統領の移民政策に関連し、季節労働者や移民に大きく依存している部門における今後の労働供給への影響を懸念する声も聞かれた。

物価については、「インフレは横ばいから緩やかの範囲で推移し、全体としては控え目に上昇した」とし、前回とほぼ同様の判断だった。なお、業種により販売価格のバラつきも見られ、小売業や製造業では価格が横ばいまたは下落する例もあったと報告した。今後の見通しは、物価は2025年も上昇し続けると予想しており、関税の引き上げが物価上昇に寄与する可能性があることを指摘する者もいたと報告した。

(加藤翔一)

(米国)

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